【ちむどんどん】重子、短大卒の良子を「同じ世界の住人」に認定していた!?

 やはりきょうだいの存在が、暢子の幸せを後押ししてくれるのかもしれない。

 8月9日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第87回では、比嘉賢秀と石川良子の兄妹が青柳家に押しかける場面が描かれた。そこで繰り広げられたドタバタ劇の最中に、これまでと旗色の違うセリフが交わされたというのである。

 ヒロインで沖縄出身の比嘉暢子(黒島結菜)は新聞記者の青柳和彦(宮沢氷魚)と結婚を約束するも、和彦の母親・重子(鈴木保奈美)は大反対。青柳家は父親が大学教授など学究肌の家柄で、母親の重子は父親が銀行の重役という裕福な家庭の出身だ。それゆえ、沖縄やんばる地方出身で高卒の暢子とは「住んでいる世界が違う」「家柄が違う」と、取りつくしまもなかったのである。

 その状況を知った良子(川口春奈)は急きょ、沖縄から上京。千葉の養豚場で働いている兄の賢秀(竜星涼)も同じタイミングで青柳家に駆け付けた。良子はともかく、賢秀がなぜ青柳家の場所を知っているのかは謎だが、そこは黙って見過ごすのがちむどん民の流儀というものだろう。

「かたくなな重子を説得に来た二人でしたが、玄関前からきょうだいゲンカを始める始末。しかも賢秀は部屋に飾ってあったオルゴールを勝手に触っては壊してしまうという最悪の出だしでした。良子は母親手作りのアンダンスー(沖縄風の油味噌)やサーターアンダギー、麩や黒糖といった沖縄の名産品を手土産に持参。もちろん、重子の心はそんなものにピクリとも動きません」(テレビ誌ライター)

 暢子の良さをなんとかして説明しようとする二人だが、賢秀は「あいつは足がデージ速いさ!」と、どうでもいいフォローしかできない有様。それに対して良子は「本当に家族思いで優しい妹なんです」と説明し、家族愛に恵まれていない重子の心に少しは響いていそうな雰囲気だった。

 そんな二人からの説得に、基本的には拒絶しながらも、意外にもしっかりと耳を傾ける重子。すると彼女の態度が軟化したように見える場面もあった。それは暢子や比嘉家に対して「住む世界が違う」と言い続けてきた重子が、少しだけ歩み寄りを見せたシーンだったという。

賢秀と良子の訪問に戦々恐々としていた重子だったが…。トップ画像ともに©NHK

 賢秀は、比嘉家の母親・優子(仲間由紀恵)が「披露宴で琉装するのを楽しみにしてるんです」と力説。「りゅうそうって?」と訊ねられ、「琉球の着物のこんなして派手な…」と要を得ない説明を続ける賢秀に対し、重子は良子と賢秀を見比べながら「住む世界が違いますから! 牛飼いのあなたとは」と言い放ったのだった。

「ここで重要なのは『住む世界が違う』のはあくまで賢秀のことであり、良子に対して重子が説明を求めたことです。どうやら重子は、短大卒で小学校教員の良子を、同じような世界に住んでいるとみなしている様子。背景となる文化は違えども、同じ言葉で会話ができる相手だと認識しているのかもしれません。そうなれば良子を突破口として、青柳家と比嘉家が近づく可能性もありそうです」(前出・テレビ誌ライター)

 和彦が昭和24年度生まれなことから、重子は昭和ひと桁生まれと推測できる。しかも良家のお嬢様ということから、女子大学や女子専門学校を卒業している可能性が高そうだ。

 一方で昭和25年度生まれの良子は短大卒だが、彼女が高校を卒業した昭和44年当時は女性の大学進学率(四大+短大)が16.1%に過ぎず、女子学生の6人に一人しか大学に進学しない時代だった。それゆえ学歴面で見ると、良子は重子にとって「こちら側の世界の住人」ということになるのである。

「貧乏なうえに借金まである比嘉家ゆえ、良子が短大に進学できたのは大きな謎でした。お金の問題はさておき、良子を短大卒の小学校教員にしておいたのは、暢子と和彦の結婚に際して突破口となる人物にするためだったのかもしれません。本作の制作陣は、まず最終回を決めてから逆算して物語を構築していったそうですから、暢子と和彦が結婚する流れに結び付くよう、良子を短大に進学させたのかもしれませんね」(前出・テレビ誌ライター)

 果たして良子はかたくなな重子を説得することができるのか。彼女の知性が発揮される場面に期待したいところだろう。