それ、話のすり替えでは? おかしさを感じた視聴者も少なくなかったことだろう。
8月19日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第95回では、ヒロイン青柳暢子(黒島結菜)の夫で東洋新聞社に勤める和彦(宮沢氷魚)が退職を迫られることとなった。
前々回、暢子の兄・比嘉賢秀(竜星涼)はネズミ講まがいのマルチ商法に騙されていたことに気づき、首謀者のアジトに乗り込むことに。しかし捕まってしまい、逆に違約金として200万円を請求されていた。そこに暢子と和彦、幼馴染の智らが駆け付け、相手と大乱闘に発展。警察も出動する騒ぎとなっていた。
「その様子が週刊誌にスクープされ、『ネズミ講仲間割れ“大乱闘” 東洋新聞記者まさかの関与!?』と題した記事が出ることに。目元は隠されているものの和彦の顔写真も掲載されてしまったのです。その記事を手に編集局長が和彦の勤める学芸部に乗り込んできたのでした」(テレビ誌ライター)
編集局長は、記者が悪徳商法に関わっていたとなると、読者はもちろんのこと上層部も黙ってはいないと激怒。「責任を取って退職届を書け!」と和彦に迫り、書きたくないなら懲戒解雇にすると圧力をかけてきた。
上司の田良島デスク(山中崇)は「俺が辞めるので青柳は不問にしてください」と和彦をかばったものの、結局は和彦が退職届を提出。東洋新聞社を辞めることになったのである。
不幸な事件に巻き込まれた形の和彦。だがこの一件を巡っては、なんとも不自然なやり取りが交わされていたというのだ。
「編集局長から叱責された時、田良島デスクはなぜか和彦に対して『殴っちまったのか?』と質問。和彦が『突き飛ばしたのは事実です』と認めると、編集局長は『暴力を認めるんだな?』とネジ込んでいました。しかし今回のスクープ記事では新聞記者がネズミ講に関与していたかどうかを問題としており、和彦が暴力をふるったかどうかは主題ではないはずです」(前出・テレビ誌ライター)
それがなぜか、暴力の有無が懲戒事由へとすり替えられていた今回の騒動。しかしネズミ講への関与が問題なのであれば、すでに警察も介入していることから、和彦が「被害者側」であることは簡単に説明できるはずだ。
もちろん新聞社としては、どんな形であれ記者がネズミ講の騒動に巻き込まれていたこと自体を問題視するだろう。しかし昭和の当時は週刊誌のステータスが今よりもはるかに低く、スクープ記事を理由に警察からも不問にされている記者をクビにすることなどありえない時代だった。それがなぜ「懲戒解雇」にまで発展したのだろうか。
「和彦は以前から編集局長に物申すなど、不遜な態度で嫌われていました。第52回ではフォンターナで食事をしている最中に『入社5年目の若造が編集局長に説教か?』と絡まれ、『説教ではありません、意見を述べているだけです』と反発。しまいには酔っぱらった編集局長と揉みあいになり、投げ飛ばしていたのです」(前出・テレビ誌ライター)
この時は田良島デスクの口添えもあって不問に付されていた和彦だが、編集局長から相当に嫌われていたことは間違いない。それゆえマルチ商法騒動でのスクープ記事はむしろ、和彦を正面切ってクビにできる「渡りに船」だったのではないだろうか。
仕事に対して真っ直ぐと言えば聞こえはいいが、社内での人間関係を上手く構築できず、しまいには同僚で恋人の大野愛(飯豊まりえ)との婚約を破談にしていた和彦。どうやら彼の居場所はすでに東洋新聞社にはなかったのかもしれない。