【ちむどんどん】房子の回想シーンに矛盾!空襲で生き別れた妹が戦後に屋台を手伝っていた?

 ねじ曲がっているのはヒロイン夫婦の性格だけではなかったようだ。

 8月23日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第97回では、イタリア料理店「アッラ・フォンターナ」の大城房子オーナー(原田美枝子)が、空襲で生き別れた妹との思い出を語る場面があった。その回想シーンに「時空がねじ曲がっている」と矛盾を指摘する声が続出しているという。

 フォンターナに勤めていたヒロインの青柳暢子(黒島結菜)は念願の独立開業を控えるも、妊娠していることが判明。当初は独立を後押ししていた房子も、暢子の体調を気遣って開業を延期すべきと忠告だ。だが頑固な性格の暢子は「絶対に諦めたくない」と拒否。そんなかたくなな暢子に、房子は「妹のような思いをさせたくない」と語ったのだった。

 房子にとって妹の智子(花岡すみれ)は唯一の肉親。早くに両親を亡くした際には親戚に預けられていた智子だが、房子が屋台を開業して経営が軌道に乗ったことで、引き取ることができていた。

 房子は戦時中、妹と一緒に暮らしていたと回想。身重の妹は出征した夫の帰りを待ちながら、ただで居候させてもらうのは悪いということで房子の商売を手伝っていた。ところがある日、智子は急に倒れてしまい、流産してしまうことに。房子は「私がもう少し気遣ってあげていれば」と悔やみ続けているようだ。

 そんな経験を持つ房子ゆえ、自分の姪孫である暢子の体調を気遣うのは当然の話。本来なら人に話したくない妹の思い出をわざわざ口にしたのも、それだけ暢子のことを想っているからだろう。だがそんな重要な場面にて、これまで描かれていた物語との矛盾点が指摘されているというのである。

「房子と智子が一緒に働いているシーンは、どう見ても戦後の闇市。智子は『出征した夫の帰りを待っていた』のですから、戦後の場面だと考えるのが普通でしょう。しかし6月10日放送の第45回で房子は、空襲で智子と生き別れになったと語っており、今回のシーンと明らかに矛盾してしまうのです」(テレビ誌ライター)

 なんとも不可思議な場面だが、この矛盾点については<闇市っぽく見えるが、実は戦時中のシーンだった>と説明できなくもない。智子が夫の帰りを待っていたのも「いつかは帰ってきてくれる」との気持ちだったということか。それならば智子は戦時中に流産し、その後の空襲で生き別れたという話になるようだ。

若かりしころの房子(桜井ユキ)。屋台を営んでいたのは戦前と、戦後の闇市だったはずだが…。

 だがこの説明でもやはり、矛盾点はぬぐい切れないという。それは房子が戦時中に屋台を経営している描写そのものがおかしいというのである。

「8月4日放送の第84回で房子は、沖縄県人会会長の平良三郎(片岡鶴太郎)と出会ったころの思い出を暢子に明かしました。同時に三郎も房子との思い出を語っていましたが、そこで二人の語った内容が、今回の回想シーンと矛盾しているのです」(前出・テレビ誌ライター)

 その第84回で房子は、戦前に鶴見で屋台を切り盛りしていたころ、三郎に一目ぼれしたと説明。二人は結婚を意識していたが、三郎が実業家の御曹司であることから周囲は房子との結婚に反対。三郎に見合いをさせたうえで親戚が房子に手切れ金を渡し、房子は姿を消していた。

 房子は手切れ金を持って沖縄県人会を飛び出し、「念願の料理屋を構えた」と三郎は説明。見合い結婚をした三郎は、しばらくしてから出征。その様子を物陰から見守っている房子の姿も描かれていた。

「つまり房子は戦前の時点で料理屋を営んでいたのです。それが今回の回想シーンでは、なぜか房子が戦時中に屋台を切り盛りしたことになっていました。その料理屋が空襲でなくなったのであれば、妹の智子と空襲で生き別れた話と矛盾するのは明らか。ともあれ本作では房子の人生における時間軸が整理されておらず、その時々のエピソードに応じて都合よく脚色されるため、矛盾が露呈してしまうのです」(前出・テレビ誌ライター)

 そもそも房子がどうやってイタリアの日本大使館で働くようになったのかもまだ描かれていないが、その辺の人物設定はどうなっているのか。甘々の設定に翻弄される演者こそが気の毒というものだろう。