どうやらこの世界では、借金は「した者勝ち」ということになっているようだ。
8月26日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第100回では、ヒロインの青柳暢子(黒島結菜)が、元同僚で先輩料理人の矢作知洋(井之脇海)を自分の店で雇うまでのいきさつが描かれた。
暢子と矢作は東京・銀座のイタリア料理店「アッラ・フォンターナ」で共に働いていたが、オーナーの大城房子(原田美枝子)が親戚の暢子をえこひいきしていると勘違いした矢作は、仲間をそそのかして集団離職。さらにはフォンターナの権利書を盗み出し、それを担保に金を借り、自分の店を出していたのだった。
しかし経営は上手くいかず、店を潰したあげく本人は夜逃げ。離婚届を書き残して家も家も飛び出てしまっていた。
「暢子は房子の勧めもあってフォンターナから独立。沖縄料理店『ちむどんどん』の開業に向けて、信頼できる料理人を探していました。ある日、かつて下宿していた横浜・鶴見で食い逃げ騒動が発生。その犯人が食い詰めた矢作だったのです。暢子は矢作をフォンターナに呼び、料理人になってほしいと依頼。房子はオーナーとして従業員への配慮が足りなかったことを矢作に謝罪し、退職金を渡しました」(テレビ誌ライター)
まさかの無罪放免となった矢作。店には妻の佳代(藤間爽子)が呼び寄せられており、「やり直そう、もう一度。頑張って! 私のために、あなた自身のために」との言葉に心を打たれた矢作は、房子に「オーナー、申し訳ありませんでした!」と土下座したのであった。
後日、暢子の店「ちむどんどん」を訪れ、正式に雇われることになった矢作。久しぶりに料理に取り組む彼の目には涙があふれ、料理ができる喜びに満ちあふれていた。そんな感動シーンが続出した今回だったが、果たしてそんなに話が上手くいくものなのか。視聴者からはこんな疑問が噴出していたというのである。
「房子オーナーが矢作を赦したり、暢子が矢作を信頼して料理人として雇うくだりは、物語として受け入れられるところ。しかし矢作自身はまだ、大問題を抱えているはずです。彼は自分の店を開くために裏稼業の連中から借りた金を、未だに踏み倒したまま。その借金を返さないことには、いつまでも取り立てに怯える日々が続くのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)
矢作の借金ではフォンターナから盗み出した権利書が担保となっていた。しかし矢作が夜逃げしたことにより、“月島のスッポン”こと権田正造(利重剛)は権利書を1000万円で買い取るよう、房子に要求していた。
この騒動は、かつて房子と恋仲だった沖縄県人会会長の平良三郎(片岡鶴太郎)が仲裁に入ることで解決。戦後のシベリア抑留で三郎の世話になっていた権田は「この店から、手ぇ引く」と引き下がっていたのだ。
「しかしフォンターナへの強請りはやめたものの、権田は矢作に大金を貸したまま。いくら三郎への恩義があろうとも、矢作の借金は話が別ですから、回収もせずに諦めることなど有り得ません。しかも今回、矢作の所在が明らかになったことで、借金の取り立ても再開するはず。暢子の元で働くことになったことにより、矢作にはもう逃げ場がなくなったのです」(前出・テレビ誌ライター)
普通に考えれば<矢作の借金はどうなった?>となる今回のエピソード。しかしこの調子ではおそらく、借金の話題が復活することはなさそうだ。そもそも「ちむどんどん」では、暢子の実家である比嘉家が長年にわたって借金を抱えているのに、比嘉家の家族にはそれを苦しんでいる様子が見られないのである。
こうやって、またもや有耶無耶にされていく「借金」。どうやら本作の世界観では、借金はした者勝ちということになっているようだ。