【ちむどんどん】原因は伝言ゲーム…では回収されなかった「瀕死の重体」の誤用問題!

 どうやら本当に、日本語の用法を間違っていたようだ。

 9月1日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第104回は、ヒロインの青柳暢子(黒島結菜)らが慌てた様子で病院に駆けつけ、入院中の砂川智(前田公輝)を見舞うシーンから始まった。そこで繰り広げられた会話に視聴者が二度、驚いていたようだ。

 前回、ラストシーンで交通事故に遭っていた智。電話を受けた暢子は驚いた様子で「瀕死の重体?」と声に出していたが、その言葉が日本語として誤っていると、視聴者から猛ツッコミを受けていた。

 重体には“命に関わる”という意味が含まれており、「瀕死の重体」という用法は同じような意味の言葉を重ねて用いる“重言”にあたる。その重言には「頭痛が痛い」や「馬から落馬する」といった例があり、これらはいずれも誤用とされる表現だ。

「そんな誤用がよもやNHKの朝ドラで聞かれるとは、視聴者もビックリ。制作陣が誤った日本語を使うとは何事かと騒ぎになり、ツイッターでも『瀕死の重体』がトレンドに上がっていました。その一方で、この誤用は伝言ゲームが原因の聞き間違いだと推測する向きもあり、わざと暢子にしゃべらせたのではとの指摘もあったのです」(テレビ誌ライター)

 たとえば「智を乗せた救急車が渋滞にハマった」という話から、智(さとし)を瀕死(ひんし)、“渋滞”を“重体”と聞き間違えた結果、「瀕死の重体」になってしまったとのオチもありえるということだろう。

 そしてふたを開けてみれば、智が交通事故で大変なことになったという話はやはり、伝言ゲームによる聞き間違いが原因だった。

智が入院している病室で「伝言ゲーム」の一部始終が明かされることとなった。トップ画像ともに©NHK

 病室を訪れた暢子は、智に向かって「トラックに轢かれて、生きるか死ぬかだったんじゃ?」と口走っていた。さらに暢子は、沖縄県人会の平良三郎会長(片岡鶴太郎)から「救急車で運ばれて、頭蓋骨陥没で、生死の世界をさまよった」と聞いていたと説明だ。

 すると三郎の妻・多江(長野里美)は、自分が三郎に「トラックに轢かれて、頭を強く打って、救急車で運ばれた」と伝えたことを主張。その情報は沖縄料理店「あまゆ」店主の金城順次(志ぃさー)が、智本人からの電話で聞いたものだという。

 しかし、当の智は「トラックに轢かれそうになって、頭を軽く打った」と話していたことを説明。どうやら順次が勝手に話を大きくしてしまい、三郎がさらに「生死の世界をさまよった」といった情報を付け加えていたことが判明したのである。

「おそらく制作陣は、伝言ゲームでの勘違いを面白おかしく表現したつもりなのでしょう。ところがこの会話から明らかになったのは、智の状態を伝えた人たちが誰も『瀕死の重体』という言葉を使っていなかったこと。『瀕死の重体』という誤用は暢子のセリフで突如出現しており、伝言ゲームとはなんら関係なかったのです」(前出・テレビ誌ライター)

 結局のところ制作陣は「瀕死の重体」という用法が誤用だとは気づかぬままに、その言葉を暢子にしゃべらせていたようだ。よもや天下のNHKでこんな初歩的な過ちが堂々と放送されるとは、視聴者もあらためて驚いたことだろう。