【舞いあがれ!】永作博美の聖子ちゃんカットだけではない!14年前を示す高畑淳子の演出とは?

 その髪型に、アラフィフ以上の視聴者はビビッドに反応していたようだ。

 10月12日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第8回では、ヒロイン・岩倉舞(浅田芭路)の母親・めぐみ(永作博美)が実家を飛び出した際のエピソードが明かされた。その場面での演出に、視聴者が思わず感心の声をあげていたという。

 本作では平成6年(1994年)年の長崎・五島を舞台に、東大阪から転居してきた小3の舞が、祖母・才津祥子(高畑淳子)との同居生活を通して成長していく姿を描いているところだ。

 母親のめぐみは14年前に祥子とケンカし、駆け落ち同然に島を飛び出していた。夫の浩太(高橋克典)とどこでどう知り合ったのかはまだ描かれていないものの、この回ではめぐみが「このごろ、14年前のことをよう思い出すねん」と当時を回想していた。

 その場面では祥子が「世間知らずのお前にでくっわけがなか!」とめぐみを叱責。「勝手に決めつけんでよ」と反発するめぐみは「絶対ちゃんとやってみせるけん」と啖呵を切り、その言葉に祥子は「なら勝手にせんね!」と突き放していた。その場面に視聴者が沸いていたのである。

「なにしろ、めぐみの髪型が典型的な聖子ちゃんカットでしたからね。14年前の1980年は松田聖子がレコードデビューした年で、その前年にドラマ出演した時にはすでにこの髪型になっていたもの。外巻きのレイヤーカットに加え、内巻きにした前髪で眉を隠すのが特徴で、当時は若い女性のあいだで爆発的に流行。日本中の美容院で『聖子ちゃんカットにしてください』で通じていたものです」(女性誌ライター)

 めぐみは昭和36年度(1961年度)生まれの設定で、1980年には19歳を迎えるところ。当時、聖子ちゃんカットにしていたのも当然だろう。視聴者にとっても、この髪型を見るだけで物語の舞台が1980年ごろだと分かるわけで、絶妙な演出となっていたのである。

 そんな永作の聖子ちゃんカットに加えて、この場面ではもう一つ、見逃せない演出が施されていたという。それは祖母の祥子を演じる高畑の髪だったというのだが、祥子の髪型は14年後とほとんど変わりがないようだが…。

「見逃せないのは祥子に白髪がないこと。おそらく1980年当時に40代の彼女は、まだまだ老け込む歳ではなかったことを示しています。それが平成6年の場面になるとすっかり白髪まじりの初老となっていますが、実はその白髪、高畑自身の地毛なのです。祖母の祥子を演じるにあたり、高畑は地毛でやりたいと自分から申し出たのだとか。そのため現在の高畑は髪を染めておらず、『舞いあがれ!』以外の仕事ではわざわざ自前のウィッグを着用しているそうです」(前出・女性誌ライター)

祥子役のために自前の白髪を活かしていた高畑淳子だが、この場面では髪を黒くしていたようだ。トップ画像ともに©NHK

 つまり高畑はたった20秒間の回想シーンのためだけに、髪を黒くしていたことになる。おそらくは髪を染めたのではなく、ヘアカラーを塗っただけだと思われるが、白髪が目立たなくなるまで黒く仕上げるのはけっこう大変。聖子ちゃんカットのウィッグで対応できる永作に比べると、相当な手間がかかっていたことだろう。

 しかも14年前の祥子が黒髪だったことは、物語の上でも重要な意味を持っていた。回想シーンの直後、めぐみは五島の港で祥子に会った際の思い出を口に。そこで彼女は「14年前とは違てた。ちょっとおばあちゃんなってた」と語り、ハツラツとしていた祥子が老婆になったことへの驚きを明かしていたのである。

「聖子ちゃんカットの永作と、髪を黒く染めていた高畑。この20秒間の回想シーンで視聴者は、14年間という時の流れを深く実感できたに違いありません。現代を生きる若者にとっては1980年と1994年に大した違いなどないかもしれませんが、その時代を生き抜いた人たちにとっては、この14年間で生じた変化が人生に大きく影響を及ぼしていたわけです」(前出・女性誌ライター)

 世間知らずの小娘から、子育てに悩む母親へと成長しためぐみ。そして厳しい母親から、孫娘の成長に相好を崩すようになった祥子。14年間の時を経て変わっていった二人の姿を見れば、ヒロインの舞がこれからどんな成長を見せてくれるのかも、より楽しみになるのではないだろうか。