【舞いあがれ!】舞が成長した10年後、工場や大学に垣間見えたこだわりの絵作りとは!

 10年の歳月をさりげなく描き出すこだわりに、視聴者も感心してやまなかったことだろう。

 10月21日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第15回では、ヒロインの岩倉舞が小3から大学1年生へと成長。演者も子役の浅田芭路からいよいよ福原遥へと替わり、浪花大学の人力飛行機サークル「NANIWA BIRDMAN」を見学する様子が描かれた。そんな10年の変化が随所に見られたという。

 前半では、父親の浩太(高橋克典)が挑戦していた「特殊ねじ」の試作に成功。発注元からすぐに量産に取り掛かってほしいとの連絡があり、経営が傾きかけていた岩倉螺子製作所は起死回生の逆転劇を果たすこととなった。

 これにより岩倉家の生活も危機を脱し、兄の悠人(齋藤絢永)は希望通り、私立の中高一貫校に進学することに。舞は模型飛行機を完成させ、さらには浩太に伊丹空港の絶景スポットに連れて行ってもらったことで、飛行機への憧れをますます強めたのだった。

「今回は飛行機好きを唸らせる描写がいくつも見られました。舞と浩太が飛行機の着陸を観に行った場所は、大阪・伊丹空港の南側を流れる千里川の土手。ここは日本有数の《飛行機好きの聖地》として知られており、舞が見上げていたのはおそらくANAのボーイング767-300でしょう。1994年当時にはすでに飛んでいた機材であり、ここでも時代考証がきっちりしていることに感心しますね」(飛行機に詳しいトラベルライター)

 その後、場面が切り替わると時代は2004年4月にジャンプ。舞は自分の部屋で飛行機のイラストを眺めていた。おそらく自分で描いたであろうイラストに描かれていたのは、軽飛行機の傑作機である「セスナ172」。史上最多の4万5000機が製造されたモデルだ。

 そんなセスナ172をなぜ舞が描いたのか? それは東大阪市から最も近い空港である八尾空港に、同機が数多く離着陸しているからに違いない。空撮などを手掛ける事業航空会社の所有機に加えて個人所有の機体もあり、間近で見ながらイラストを描くには絶好のチョイスなのである。

 そんな航空関連の描写に加えて、舞の実家であるねじ工場の場面では、10年の歳月が経ったことをさりげなく描いている様子が視聴者の目を惹いていたようだ。

 工場の2階にある事務所では、壁に掲げられた表彰状が2枚から4枚に増加。ロッカーに貼られているお弁当屋のちらしにはカラー写真のメニューが追加されていた。

 従業員は2人から18人へと大幅に増えており、事務所の机は手前に一つ増えて計3つに。10年前にはなかったパソコンも導入されており、当時すでに主流になりつつあった液晶ディスプレーを使っていた。事務員が使っている机そのものもグレードアップされているようだ。

 母親・めぐみ(永作博美)のデスクには、悠人と両親が一緒に東大の赤門前で撮った記念写真が置かれており、めぐみは就職活動中の悠人を心配している様子。悠人は東大の4年生になったばかり。本来なら4月にはもう内定が出ているはずだが、未だ何の連絡もないことにめぐみがやきもきする姿もまた、実情を反映していたのである。

舞がサークル探しをする場面では大阪府立大の卒業生から「懐かしい!」との声が多数あがっていた。トップ画像ともに©NHK

「そしてなにより驚いたのは、舞が入学した浪花大学のシーン。そのロケ地は大阪公立大学の中百舌鳥キャンパスで、旧・大阪府立大学にあたります。ここは大阪府で唯一、航空宇宙工学を学部から専攻できる大学であり、『舞ちゃんは18歳。航空工学を学ぶ大学生になりました』というナレーションに沿ったロケ地選定になっていたのです。ロケしやすいという都合ではなく、物語の設定に合った場所を選ぶという制作側の姿勢は、飛行機好きとして実に嬉しい限りですね」(前出・トラベルライター)

 第15回で時代が一気に10年飛ぶことはあらかじめ分かっており、その不自然さを気にする視聴者も少なくなかった。それがごく自然に移り変わっていったのはやはり丹念な絵作りや演出あってこそ。この調子なら福原遥がヒロインとなった第4週からの放送も、大いに楽しみにしてよさそうだ。