【舞いあがれ!】お好み焼うめづに店舗存続の危機!舞たちの「憩いの場」はなくなってしまうのか!?

 その「正しい考証」を反映した変化に、むしろ危機感を覚えた人たちもいたようだ。

 10月25日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第17回では、小3で仲良しになった3人が一カ所に集い、夕食を共にする場面が描かれた。その集合場所に間もなく、存続の危機が訪れるという。

 ヒロインの岩倉舞(福原遥)は高校を卒業後、航空工学を学ぶために浪花大学に進学。親友の望月久留美(山下美月)は看護師を目指すため看護学校に進み、一方で梅津貴司(赤楚衛二)は進学せずに就職を選び、システムエンジニア(SE)となっていた。

 舞は人力飛行機サークルの部費や活動資金を得るため、久留美がアルバイトしていたラグビーカフェの「ノーサイド」でアルバイトを始めることに。同店は多くのラグビー部員で繁盛しており、大量の注文に二人はヘトヘトの様子だ。バイト終わりには貴司の実家でもある「お好み焼うめづ」にて遅い夕食を摂っていた。

「うめづの店主(山口智充)は熱狂的な近鉄バファローズファン。舞が小3だった1994年当時には店内にラルフ・ブライアントのユニフォームを展示していました。1999年には球団名が『大阪近鉄バファローズ』へと替わり、それ以前の1997年にはユニフォームもモデルチェンジ。2004年の現在は、エースピッチャー岩隈久志(21番)のユニフォームを飾っており、時代の移り変わりをしっかりと反映していたのは実に小憎い演出です」(近鉄ファンだったライター)

 それでも店主の勝は相変わらず、赤い袖のラグラン柄が特徴の旧ユニフォームを着用。岡本太郎デザインで知られる帽子もそのままで、古参ファンらしさを醸し出していた。

 一方で看板メニューの「トルネード焼き」は10年経った今でも現在。1990年~1994年に在籍していた野茂英雄投手にちなんだメニューであり、球団とは喧嘩別れする形で米メジャーリーグのドジャーズに移籍した野茂だが、多くの近鉄ファンは移籍後も変わらずに野茂を敬愛しており、その気持ちは勝も同じようだ。

 作中では舞が人力飛行機サークルに入部して1カ月が経ち、まだ5月になったばかり。貴司はSEとしての初任給をもらっていた。舞、久留美、貴司の3人はそれぞれ、将来への夢を語り合っていたが、集いの場である「お好み焼 うめづ」に間もなく、店の存続さえ危ぶまれる激震が走るというのだ。近鉄ファンだったライターが悲しげな表情で続ける。

「この年の6月13日、親会社の近畿日本鉄道がバファローズをオリックスに譲渡する方針であることが日本経済新聞にすっぱ抜かれたのです。スポーツニュースにも関わらずスクープ元が日経だったのは、近鉄の経営が悪化し、不採算の子会社を次々と清算していったという経済ニュースの一環だったからでしょう。同年には近鉄劇場や近鉄あやめ池遊園地も閉鎖・閉園され、前年にはOSK日本歌劇団も解散していました。それでもまさかバファローズまでなくなってしまうとは、ファンにとっては青天の霹靂だったのです」

舞たちが集ったお好み焼うめづ。壁にユニフォームが掛けられた岩隈久志投手は翌年、楽天イーグルスで開幕投手を務めた。トップ画像ともに©NHK

 この「舞いあがれ!」では舞が小3だった1994年を舞台にしていた第1週~第3週にて、視聴者から<翌年の阪神大震災は描かれるのか?>との疑問もあがっていたもの。だが小3から大学生まで一気に時代が10年進んだことで、その疑問は解消されていた。

 だが2004年が舞台の第4週以降では、舞の所属するサークルにて夏になったら人力飛行機の世界記録を目指すことになっており、ここから数カ月が描かれることは確実だ。その後、ライブドアがバファローズ買収を表明した一件も世間をにぎわせつつ、9月にはオリックス・ブルーウェーブとの合併がオーナー会議にて正式に承認。11月30日をもって球団は解散したのである。

「果たして今後、お好み焼うめづは『オリックス・バファローズ』ファンの店へと様変わりするのか。当時、オリックスと新設球団の楽天でバファローズの選手を分け合ったことから、どちらかのファンに乗り替えた人が多かったものです。セリーグでは阪神ファンだったという人は、そのまま虎党に横滑り。ほかにはプロ野球への興味が失われ、Jリーグのセレッソ大阪に乗り替えた人もいました。果たしてうめづの店主はどうなるのか、店内の装飾はどう変わるのか、興味は尽きません」(前出・近鉄ファンだったライター)

 オリックスとヤクルトの日本シリーズが世間をにぎわせているなか、果たして「舞いあがれ!」にオリックス・バファローズのユニフォームが登場することはあるのか。オリックスファンならずとも、大いに気になるところではないだろうか。