お互いの立場を尊重しているからこそ、二人の関係は長続きしているのだろう。
10月25日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第17回では、ヒロインの岩倉舞(福原遥)がアルバイトを始めるいきさつが描かれた。その場面に幼馴染で親友の望月久留美(山下美月)との、ほどよい距離感が表れていたという。
飛行機を作ることが夢の舞は、航空工学を学ぶために浪花大学に進学。人力飛行機サークルのなにわバードマンに入部し、翼のパーツ作りなどに精を出していた。ある日、舞は久留美のアルバイト先であるラグビーカフェのノーサイドを訪問。「私もここで働きたいなあと思って」と切り出したのだった。
「舞の実家は18人の従業員を抱える岩倉螺子製作所。町工場としては規模が大きく、社長令嬢の舞は不自由のない生活を送っているようです。対する久留美は父子家庭で、しかも父親の佳晴(松尾諭)は仕事が長続きしないタイプ。久留美は授業料の免除を受けていますが、成績が下がったらそれもなくなるとのことで、勉強もアルバイトにも精を出しながら『将来、絶対ええ看護師さんになったる! 私いまもうメッチャ燃えてんねん!』と意気込んでいました」(テレビ誌ライター)
前日の第16回では久留美がノーサイドでアルバイトしている様子を紹介。その際に「生活費を補うために、放課後はここでアルバイトしています」とのナレーションが入っていた。その声に、専門学校生が生活費のためにアルバイトしているのかと驚いた視聴者も少なくなかったはず。同じ回では久留美が携帯電話を買ったことを舞に報告していたが、2004年当時には高校生の時点で携帯電話を持っている例が多かったもの。もしかしたら久留美は自分のアルバイト代でようやく、携帯電話が買えていたのかもしれない。
そんな久留美に対し、舞は当たり前のように携帯電話を所有。ノーサイドでアルバイトをしたいと切り出した際に、岩倉家の経済状況を知る久留美が「バイトするん!?」と驚いたのも当然のことだと言えよう。
舞がバイト代を稼ぎたいのはサークル活動のため。部費が毎月1万円かかるうえ、ほかにも活動費が必要だと説明し、「私もサークルの一人として稼がな」と意気込んでいた。
「舞と久留美のあいだに大きな経済格差があるのは明らか。令和の時代なら、久留美は《親ガチャに失敗》と言われかねない状況です。ところが久留美は舞に対して何ら含むところなく、すかさず『ほな、いま面接してもらい!』とアドバイスしていました。そこには、自分は生活費を稼いでいるのに舞は遊びのサークル活動のために働こうとしている、といった発想は微塵も感じられません。そんな二人の姿には、お互いの立場を尊重しつつ、格差を乗り越えて対等な関係として友達付き合いする幼馴染の居心地よさが示されていたのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)
舞と久留美に共通しているのは、自分の目標に向かって邁進する熱い意思だろう。だからこそお互いのことを尊重できるというもの。小3だった舞が意を決して久留美に話しかけた時から10年間、二人は固い友情を育んできたようだ。