いくら優秀でも、恋に関しては中学生レベルだったようだ。
12月1日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第44回では、ヒロインの航空学校生・岩倉舞（福原遥）と柏木学生（目黒蓮）がお互いの手を重ねるシーンが序盤のクライマックスに。すわ恋の始まりかと思いきや、そこから意外な展開になったという。
序盤では着陸を苦手とする舞を、エリート学生の柏木がサポート。柏木の部屋で舞がイメージフライトを行い、柏木が教官役を務めていた。
滑走路を視界にとらえ、エンジンのパワーを絞ろうとする舞。すると柏木が「ダメだ、早い！」と言いつつ、スロットルレバーを握る舞の右手に自分の左手を重ね、着陸が完了するまでのあいだ、二人は手を重ね続けていたのであった。
「実際の飛行訓練でも、学生のスロットル操作に教官が手を重ねて指導するのはごく普通のこと。教官役の柏木も相手が舞であることは意識せず、教官と同じように振る舞ったのでしょう。ただイメージフライトが完了して緊張感から解放されると、我に返ったのか手を引っ込めた柏木。床に広げた航路図を片付けようとするとき、彼が左手を少しさすっていたことに気付いた視聴者も多かったのではないでしょうか」（飛行機に詳しいトラベルライター）
それまでは舞のことを「できない子」扱いしていた柏木。だがこのイメージフライトで突然、舞が女性であることを意識し始めた様子が垣間見られた。
果たして二人はお互いのことを意識するようになるのか。だがここから、二人の行動に男女の違いが表れ始めたというのである。
翌日のフライトでは訓練空域が急に変更となり、舞と水島学生（佐野弘樹）が不安を示すなか、柏木は「可能です。その空域の予習もしています。私から操縦します」と自信を示すことに。自分の優秀さを過信している柏木らしさが表れていたが、この場面には柏木の変化も見え隠れしていたというのである。
「フライト中に『本別の街をインサイトしました』と自信ありげだった柏木ですが、実際に飛んでいたのは16kmも北に離れた足寄の上空。まっすぐ飛んでも3分かかるほど離れており、彼がロストポジション（自分の位置が分からなくなること）していたのは明らかでした。しっかり予習していたならあり得ない間違いであり、実はちゃんと予習できていなかったことを露呈したのです」（前出・トラベルライター）
次のフライトでも同様に、現在地を見失っていた柏木。優秀なはずの彼がなぜ、そんな間違いを犯すようになったのか。手と手を重ねたことにより舞のことを意識するようになってしまい、その恋心が彼の判断を鈍らせた可能性もありそうだ。
自分のことを気遣ってくれる舞に、半ば八つ当たりな態度を見せていた柏木。トップ画像ともに©NHK
そんな柏木に対して、舞は自分を見失っていなかった。中間審査まであと5フライトに迫ったある日、舞は雷雲の発生を予想し、訓練の中止を主張。その意見には水島も同調だ。だが柏木は海沿いなら雷雲を避けて飛べると主張。それぞれの意見を聞いた大河内教官（吉川晃司）は、舞の判断を支持して訓練中止を言い渡したのだった。
ここで注目すべきは柏木と舞が対立したことよりも、舞が自分の判断を信じていたことではないだろうか。
「柏木との急接近がありながらも、舞は何の影響も受けず、自分を見失っていませんでした。これまで舞の恋模様が描かれたことはないものの、男性社会のなかで自分を見失わずに平常心を保てるタイプであることは、人力飛行機サークルでの活動からも明らか。それに対して柏木はどうやら女性への免疫がないようで、恋の初心者さながらの動揺が表に出てしまっていたようです」（テレビ誌ライター）
そういった男女の違いは、受験を控えた高校生に例えられがち。好きな女子のことを意識しすぎて勉強がおろそかになる男子と、恋と勉強をしっかりと切り分けて集中できる女子という対比は、もはや古典的な描写だろう。
中間審査まであと5フライトに迫ったいま、果たして柏木は自分を取り戻せるのか。舞との恋物語も気になるなか、優秀だったはずの柏木がここでフェイル（退学）してしまうのではないか。そんな心配を抱く視聴者も少なくなさそうだ。
