えっ、もう終わりなの!? 駆け足すぎる展開に怒りしか沸いてこなかったようだ。
12月16日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第55回では、航空学校でパイロットを目指すヒロインの岩倉舞(福原遥)が、付き合い始めたばかりの同期生・柏木(目黒蓮)を東大阪の自宅に連れて帰るというトンデモシーンが展開された。
その無神経さは人格が変わったどころか、完全に別のキャラに入れ替わったのではと思えるほど。舞の変節ぶりに呆れかえる視聴者が続出するなか、一部の視聴者をさらに驚かす描写があったという。
それはナレーションと共にあっという間に1年の時が流れ、舞が航空会社への面接に挑んでいたこと。2年間通うべき航空学校が、最初の10カ月を描いただけで、強制終了されることになってしまったのである。
舞は浪花大学の2回生だった2005年に、航空学校の入学試験に合格。翌2006年12月に入学し、宮崎での座学課程と帯広でのフライト課程を経て、第55回では物語が2007年9月まで進んでいた。
「その後は宮崎に戻ってさらに高度なフライト課程を履修し、最後は仙台にてエンジン2基を備えた双発機の操縦を学びます。ところが今回、宮崎と仙台の課程が一気に省略され、いきなり1年後にジャンプ。『ついに航空会社への就職活動が始まりました』とのナレーションとともに、面接に挑む様子が映し出されました。この駆け足すぎる展開には、舞のさらなるフライト訓練に期待していた航空マニアが激怒し、ガッカリしています」(飛行機に詳しいトラベルライター)
帯広での最終試験では、他の空港にタッチ&ゴーして戻ってくる課題が与えられていた。それに対して二度目の宮崎では自分でフライトプランを策定し、他の空港に着陸してから戻ってくる訓練を積む。九州は北海道より気象条件が変わりやすいこともあり、この時点でフェイル(退学)してしまう学生も少なくない。
最後の仙台では、それまでの単発機からステップアップし、エンジンを2基備えた双発機の操縦を学ぶ。実際に片方のエンジンを停止する「片肺飛行」を経験したり、計器だけを頼りに飛ぶ計器飛行も学ぶなど、さらに難易度の高い操縦に挑むのである。
最終的には「事業用操縦士(陸上多発)」と「計器飛行証明」という資格を取得して、航空学校を卒業。仙台では航空会社への就職活動も行われ、航空会社のスタッフが航空学校に足を運んで面接が行われるという流れだ。
「本作の制作陣は長い時間をかけて、航空学校のモデルとなった航空大学校で取材してきたのですから、二度目の宮崎や仙台での課程もしっかりと描かれるものだと期待していました。計器飛行で夜の空を飛ぶなど、見どころはいくらでもあったはず。ところがそれをざっくりと省略してしまったのですから、開いた口がふさがりません」(前出・トラベルライター)
これが大学受験の物語であれば1浪目は詳しく描きつつも、2浪目はナレーションで済ませてしまうようなもの。自動車教習所なら仮免取得までだけを描き、路上教習は省略するようなものだろう。ともあれ「パイロットを目指すヒロイン」の物語として、あまりにも乱暴すぎるのは火を見るよりも明らかだ。
しかも今回、柏木と付き合い始めた場面を描いたにもかかわらず、あっという間に1年が過ぎたことも疑問だ。異性との交際における事件の多くは、付き合い始めの時期に発生するもの。そこを省略してしまっては、無理やり恋バナを盛り込んできた意味すら失われるというものではないだろうか。
「現時点でまだ全体の半分も放送されていないのに、もう航空学校を卒業するという展開の速さにも驚きです。そもそも本作は『空を飛ぶ夢に向かって、困難に翻弄されつつも大空へ飛び立つ姿を描く物語』という触れ込み。それならばパイロットになるまでの道のりをもっと丁寧に描くべきではないでしょうか。こんなにあっさりと航空学校を卒業するとは、もはや看板倒れと指摘せざるを得ません」(前出・トラベルライター)
五島編、そしてなにわバードマン編を描いた第7週までは、多くの視聴者が感動に涙を流していた。それが第8週からの航空学校編ではドタバタ活劇へと様変わりし、しかもほとんどの視聴者が求めてもいない恋バナまでぶち込んでくる始末だ。
そんな悪夢の航空学校編が、軌道修正することもなくたった4週で強制終了。次週予告では五島に住む祖母の祥子(高畑淳子)の姿も久しぶりに映し出されていたが、視聴者としては期待よりも心配のほうが募っているのかもしれない。