迷走する舞と浩太にしびれを切らした?「#舞いあがれ」がまるで反省会タグに変容!

 この閉塞しきった状況には、視聴者も不満を漏らさずにはいられないようだ。

 1月5日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第65回では、ヒロインの岩倉舞(福原遥)と父親の浩太(高橋克典)が二人そろって煮え切らない態度を取ることに。迷走する二人の姿に、視聴者もしびれを切らし始めているという。

 物語の舞台は2009年5月へと進み、浩太が経営する部品工場の株式会社IWAKURAはリーマンショックの影響を脱せないまま。経理総務課長の古川(中村靖日)がさらなるリストラを進言するも、浩太は従業員の整理には及び腰だ。

 一方で舞は家業の工場を助けるため無給で働いているものの、兄で投資家の悠人(横山裕)からは「自己満足」「無責任」と厳しい言葉を投げかけられることに。1年後には航空会社に入社する立場であることを指摘されると、返す言葉もなかったのである。

「そんな二人に視聴者も感情移入がしづらい様子。リーマンショックの影響で倒産した中小企業は数知れずだったなか、IWAKURAが無傷でいられるはずもありません。とはいえIWAKURAが奇跡的に復活するような物語では安易すぎますし、いみじくも悠人が指摘したように『損切り』のできない浩太には視聴者もイラつくばかりでしょう。そして舞のほうも無類のお人よしがさすがに鼻につくところ。それに加えて多くの視聴者から《それはない》と指摘されていた柏木との交際が続いている点もまた、感情移入を阻む大きな障害となっています」(テレビ誌ライター)

 業績がどんどん落ち込むなか、リストラや工場売却といった損切りに踏み切れず、破滅の道へまっしぐらの浩太。そして柏木という隠れ不良債権の彼氏とダラダラとした交際を続ける舞。そんな二人の煮え切らなさに、視聴者の不満はもはや爆発寸前だろう。

 その不満は通常であれば、反省会タグに書き込まれるもの。この「舞いあがれ!」ではシリーズ序盤の五島列島編で反省会タグが鎮静化していたのに対し、ドタバタ活劇と恋バナ要素に批判が集まった航空学校編では、一転して反省会タグが活性化していた。

 ところがIWAKURAの苦境に焦点を当てた今週は、その使い分けに変化が生じているという。反省会タグに批判やイチャモンのツイートが並ぶところは変わっていないものの、本タグである「#舞い上がれ」のほうにも視聴者の不平不満が書かれ始めているのである。

「第65話の放送後にはその度合いが増し、物語序盤からの登場人物だった章兄ちゃんこと結城(葵揚)がIWAKURAを退社したことへの不満と、舞との電話で無神経さ丸出しの発言が飛び出した柏木への批判が本タグでも噴出。さらには舞に嫌みを言いまくる事務員・山田(大浦千佳)への批判も数多く、それに呼応するようにヒロインの舞に対しても《もう少し考えて発言しようよ》といった小言がつぶやかれている有様です」(前出・テレビ誌ライター)

結城(右)の退社には心の張り裂けるような想いを抱いた視聴者もいたようだ。トップ画像ともに©NHK

 よもや本タグが反省会タグさながらになるとは驚きだ。だが実のところこの動きは、物語の流れから考えると決して異様ではないの指摘もあるという。

「視聴者による不平不満は結局のところ、リーマンショックという世界中に影を落とした巨大な経済危機の反映ではないでしょうか。町工場を舞台にリーマンショック後を描くのであれば、物語が不穏になるのは避けようのないところ。ダークエンドすら予感させる先行きの見えない状況では、視聴者の反応がネガティブ寄りになるのも致し方のないところです。そんな物語をどうやって展開させていくのか。ここからが制作陣の腕の見せ所かもしれません」(前出・テレビ誌ライター)

 朝ドラにのめり込んでいる視聴者すらネガティブな反応を見せてしまう鬱展開を、あえて描いている「舞い上がれ!」。いまや浩太が病に倒れるかもという状況ながら、物語はまだ折り返し地点にすぎない。ここから3カ月間、どんな展開で楽しませてくれるのか。そんな心構えでいるのが吉なのではないだろうか。