【舞いあがれ!】貴司はもう根無し草ではない?舞を想った短歌の「オダマキ」に秘めた意味とは

 それに気づかないところがまた、舞らしさなのかもしれない。

 1月23日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第77回では、ヒロインの岩倉舞(福原遥)がまたもや恋に不器用なところを示したという。

 幼馴染で歌人の貴司(赤楚衛二)のもとを訪れた舞。貴司は4年前に古書店デラシネの経営を引き継ぎ、日々、短歌を詠む生活を送っていた。この日は“短歌界の芥川賞”と呼ばれる「長山短歌賞」に向け、応募する50首を選んでいた貴司。舞はその歌選びを手伝うという。

 ここで舞が手に取ったのは、次のような短歌だった。

舞い落ちる
桜の花片(はなびら)
乗せたとき
オダマキの葉の
揺れが止まった

 舞は「咲いてる桜やなくて、ちっちゃい葉っぱ見てるのが貴司くんって感じやな」との感想を口にしていた。そんな舞に視聴者たちは半ば呆れつつ、彼女らしさを感じていたという。

「この短歌は、舞への想いを詠んだものに違いありません。冒頭の『舞い落ちる』が舞の名前に掛かっていることは明らかですが、当の舞はその想いに気づいていないようです。ただこの短歌でなにより注目なのは、貴司が自分自身をオダマキに例えていることでしょう」(女性誌ライター)

短歌選びを手伝う舞。トップ画像ともに©NHK

 オダマキ(苧環)とは色とりどりの花をつけるキンポウゲ科の草花。もともと山野に自生しており、生育は旺盛だ。鉢植えでも露地植えでも育てやすいが暑さに弱いところがあり、日当たりの良いベランダなどには不向き。それこそデラシネの裏庭はオダマキにちょうどい良い場所かもしれない。

 そんなオダマキに自分をなぞらえている貴司。桜の花びらにたとえた舞が自分の上に落ちてきたら揺れが止まるというが、その表現が現在の貴司を意味しているというのである。

「オダマキは山野に深く根を張り、毎年のように花を咲かせる多年草。その姿はデラシネ(根無し草)とは対照的です。かつての貴司は日本全国を旅しながら、各地で少し働いては引っ越すという根無し草の生活を送っていました。それが4年前に八木巌(又吉直樹)から古書店を引き継ぎ、今では東大阪に腰を据えています。そのようにデラシネからオダマキに変わったことで、自分のもとに舞が舞い落ちてくることを夢想しているのではないでしょうか」(前出・女性誌ライター)

 ともあれ、貴司と舞が小3だった時から19年が経った2013年の今も、古書店・デラシネは二人にとって心の拠り所であり続けているようだ。