その言葉に、心底驚いた視聴者も少なくなかったようだ。
2月16日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第95回では、ヒロインの岩倉舞(福原遥)が幼馴染である梅津貴司(赤楚衛二)への秘めた恋心に苦しんでいた。ここで母親・めぐみ(永作博美)の発したアドバイスが、なんとも意外すぎたという。
歌集の出版を目指す貴司だが、編集者が求める「恋の歌」を詠むことができず苦しむことに。そんな貴司を「梅津先生」と呼ぶ秋月史子(八木莉可子)は、恋敵とみなす舞への敵対心を隠そうともせず、恋に不慣れな舞は二の足を踏むばかりだ。
この日も貴司が営む古書店の「デラシネ」に足を運べなかった舞。夕食作りに勤しむ舞を心配しためぐみが声をかけるも、「貴司くん、いま大変な時やし。秋月さんもいてはるから」と気遣いの言葉を口にしていた。
「そんな舞にめぐみは『もうちょっとわがままになったら?』とアドバイス。自分が19歳の時、地元の長崎で恋仲になった浩太(高橋克典)と駆け落ち同然に東大阪に出てきたことから、『自分の気持ちのままに動いたらええねん』と助言していました。その言葉に多くの視聴者が《ええっ!》《ウソやろ…》と動揺を隠せなかったのです」(テレビ誌ライター)
めぐみから見た舞はいつも素直で、わがままなど言わない子なのだろう。しかし舞がこれまでどんな行動を見せてきたのかを知る視聴者は、舞のことを<自分のことしか考えていないわがままなヒロイン>とみなしていたのだから、まさに真逆の印象となっていたのである。
父親の影響を受けて飛行機に興味を持った舞は、浪花大学の航空工学科に進学。ここまでは確かに素直な子だったのかもしれない。しかしその後は「心配するめぐみを押し切って人力飛行機のパイロットに」「大学を中退して航空学校に進学」「航空会社の内定を蹴って実家の工場を手伝う」「周りの反対を押し切って航空機部品の製造をゴリ押し」と、常にわがままを通してばかりだ。
それでいて周りは舞のわがままを受け入れてばかり。航空学校の学費を心配することもなく、国や航空会社から多額の補助を受けて卒業した航空学校生の枠をひとつ無駄にしても、作中では誰も舞を非難したりしなかったのである。
「おそらくめぐみは本気で、舞はわがままを言ったことがないとの考えなのでしょう。航空学校進学やIWAKURA入社でも、最終的には舞の希望を快く聞いていましたし、娘のわがままなどわがままのうちに入らないのかもしれません」(前出・テレビ誌ライター)
それがなぜ今回は「わがまま」を指摘したのか。これまでのわがままは親である自分や、自分が社長を務めるIWAKURAに対するものだったことに対して、今回のわがままは他人である貴司が相手だからではないだろうか。
ただめぐみ自身、舞のわがままを認めることは決して、筋が通っていないとの指摘もあるという。
「めぐみの駆け落ちは、祖母の祥子(高畑淳子)に対するわがままに過ぎず、迷惑をかけたといっても相手は身内。めぐみは『自分の幸せしか見えてへんやった』というものも、駆け落ち相手の浩太にとっては望み通りの結果だったわけです。しかし今回の舞は、貴司に対して自分の一方的な愛情を伝えたいというもの。これで貴司の気持ちが舞に向いていなかったら迷惑でしかありません」(前出・テレビ誌ライター)
舞やめぐみのわがままな恋心を疎ましく思う視聴者からは、史子にこそ貴司とくっついてほしいとの声もあがっている。他人の気持ちに鈍感な舞なら、たとえ史子と貴司が結婚したとしても、平気な顔で「たーかしくん♪」とデラシネを訪問できそうなもの。
実のところそんな筋書きのほうが、舞が今後、飛行機作りに打ち込むためには、好都合なのかもしれない。