【舞いあがれ!】舞を想った詠んだ短歌で、貴司が五島にいた意味が回収されていた!

 視聴者から神回と称賛されるのも納得だったのではないだろうか。

 2月17日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第96回では、ヒロインの岩倉舞(福原遥)と幼馴染の梅津貴司(赤楚衛二)がついに恋仲に。二人を結んだのは、貴司が人生を懸けて詠み続けてきた短歌だった。

 今回、勇気を出して舞に告白することを決心した貴司は、舞に向けた相聞歌(恋の歌)を詠んでいた。

目を凝らす、
見えない星を
見るように
一生かけて
君を知りたい

 この歌をノートに書きつけたところで舞が現れ、二人はひしと抱き合うことに。短歌を通して心と心が通じ合った瞬間だった。その歌には、全国を放浪していたころの貴司が、舞にとって第二の故郷である長崎・五島で働いていたことの意味が示されていたというのである。

「注目は『見えない星』という箇所です。貴司は五島滞在中、不登校児の朝陽(又野暁仁)と心を通わせていました。その朝陽は星に詳しく、毎晩のように空を眺めていたもの。朝陽はある日、昼間の縁側で『昼間の空にはたくさんの星があるんだ』と語り、星の光が弱いために太陽の明るさに負けて見えないだけだと説明。夜になると『人間の目には8600個の星が見える』としつつ、それは全宇宙の星のなかでほんのわずかだと語っていたのです」(テレビ誌ライター)

 かつての貴司にとって、恋愛相手としての舞は昼間の星や、人間の目には見えない星のような存在だったのだろう。だが朝陽は目に見える星のほかにも無数の星があると教えてくれた。その一つが舞だったのではないだろうか。

貴司からハグされる舞に、視聴者は号泣していた。トップ画像ともに©NHK

 舞がパイロットをあきらめ、実家の工場を助けると決心した時には、「君が行く 新たな道を 照らすよう 千億の星に 頼んでおいた」という歌を贈っていた貴司。これもまた、五島滞在中に星を強くイメージするようになったことが着想点の一つだったはずだ。

「福井で漁港の手伝いをしていた時には、航空学校で奮闘する舞に『トビウオが 飛ぶとき 他の魚は知る 水の外にも 世界があると』との歌を贈った貴司。彼はその土地土地で得た発見を歌に詠んでいました。そうやって放浪中に様々な視点を得て成長してきた彼が最後にたどり着いたのは、自分から最も近いところに輝いていた舞だったのでしょう」(テレビ誌ライター)

 彼の詠む短歌がひとつずつ、これまでの人生を回収していった今回。その巧みかつ精緻な筋書きに感心した視聴者も少なくなかったようだ。