【舞いあがれ!】貴司が旅立つフラグ?行き先は五島か、それともパリなのか!

 幸せばかりというわけにはいかないのだろうか。

 3月22日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第119回では、歌人の梅津貴司が義祖母の祥子(高畑淳子)に対して、「もうこういう歌は詠めません」と吐露する場面があった。その言葉に不安を抱く視聴者も少なくなかったようだ。

 第二歌集の「連星」がデビュー作の「デラシネの日々」より売れており、あらたな雑誌連載も始まるなど、歌人として順調に見える貴司。しかし作中では新たな短歌がなかなか詠めずに苦しんでいる姿が描かれていた。

 ヒロインの舞(福原遥)と結婚し、現在は2歳の娘に恵まれた貴司。ますます忙しくなる妻を支える良き夫として、舞との夫婦関係はすこぶる良好だ。だがそんな幸せな家庭生活は、短歌の創作には決して向いていないのかもしれない。

 祥子は貴司のデビュー作「デラシネの日々」に収録された「海底の砂に手差して冷たさにしびれた指を水でぬくめる」との短歌を読んで、「ぬくめる」という平仮名の温かさを実感したと、貴司に伝えていた。

 だが貴司はそういった歌がもう詠めないとしたうえで、「自分で詠んだ歌やのに、今見たらすごい遠いことみたいに思います」との苦悩を口にしていたのである。

「そんな貴司の言葉は、東大阪に安住している自分への批判にも聞こえます。かつては日本中を旅しながら歌を詠んでいたものが、いまや幸せな家庭生活に恵まれ、自らの内面を歌にして絞り出す動機を失ったのかもしれません。それゆえ貴司が再び歌に向き合うのであれば、かつてのようにまた旅に出るしかないのではないでしょうか」(テレビ誌ライター)

貴司の詩集を読んで感銘を受ける祥子。トップ画像ともに©NHK

 旅をするならどんな場所がふさわしいのだろうか? ひとつの候補は祥子が直前まで住んでいた長崎・五島だろう。貴司自身、五島で働いていた時期があることに加え、若いころに会社を辞めて出奔した行き先が、舞からもらった絵葉書で見た五島の灯台だった。

 その五島で生まれ育ったからこそ、祥子には貴司の詠んだ歌のぬくもりが実感として伝わったのだろう。祥子が介護のため東大阪に移り住んだことで、彼女の家は空き家となっている。それゆえ貴司が五島で暮らす拠点も確保できるのは好都合だ。

「一方で一部の視聴者からは、貴司がまたもや出奔し、今度は海外に行ってしまうのではと不安がる声もあがっています。その出奔先とはフランス・パリ。貴司がSEに就職した際に初任給で買ったのが、歌人・金子光晴がヨーロッパ逃避行を描いた私小説『ねむれ巴里』でしたからね」(前出・テレビ誌ライター)

 第17回で貴司が購入した「ねむれ巴里」は、2月27日放送の第102回にも登場。自身が営む古書店のデラシネにて、テーブルの上に置かれていたのである。担当編集者のリュー北條(川島潤哉)は、「ねむれ巴里」を指さしながら貴司に旅連載を強い調子で打診。それを受けて貴司も旅連載を受託していた。

 それほどに大事にしている「ねむれ巴里」の存在は、貴司が金子光晴と同様にヨーロッパでの窮乏生活を望んでいることを表しているのかもしれない。金子自身は妻と一緒にヨーロッパを旅していたが、貴司が舞を連れていくことは考えづらいことから、愛する妻と娘を東大阪に置いての旅が始まる可能性もありそうだ。