【カムカムエヴリバディ】ひなたも驚いた!ビリーと小夜子の会話に見る昭和50年代の英語学習事情とは?

 ひなたが憧れの美少年と再会! そこで交わされた英会話に目を丸くしたのは、視聴者も同じだったようだ。

 2月7日放送のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第68話では、ヒロインの小学5年生・大月ひなた(新津ちせ)が暮らす「回転焼 大月」に、一目惚れ相手の少年ビリー(幸本澄樹)が突然訪問。ひなたのクラスメートで英語教室に通っている小夜子(竹野谷咲)が、美味しい和菓子を食べてみたいというビリーを連れてきたのだった。

 小夜子とビリーは英語で会話。「How much?」(いくら?)と回転焼きの値段を尋ねるビリーに、小夜子は「Sixty yen each.」(ひとつ60円)と答え、財布を取り出そうとする。するとビリーは「No no, my treat!」(だめだめ、僕がごちそうする)と制し、小夜子は「Are you sure?」(ほんとにいいの?)と返していたのである。

「あまりにも流ちょうな小夜子の英語に視聴者はビックリ。『each』の使い方も適切ですし、なんといっても『my treat』というイディオムを理解できているところは、一般的な大学生よりも優秀でしょう。あまりに小学生らしからぬ英会話ではありましたが、この場面はある意味で、京都という街の姿を反映していたのではないでしょうか?」(アメリカ在住歴を持つライター)

 物語の舞台である昭和51年は、海外渡航者数が285万人を突破。ひなたの生まれた昭和40年にはわずか16万人弱だったことに比べると、実に17倍以上という大きな伸びを示していた。同年には海外渡航時の外貨持ち出しが3000ドルにまで引き上げられ(2年後には制限枠が撤廃)、海外旅行が庶民の手にも届くように。それに伴い、英語学習熱も大いに高まっていたのである。

 ただ海外旅行や英語学習を巡っては、都会と地方の差がまだまだ大きい時代でもあった。ドラマの舞台である京都は大都市かつ日本を代表する古都であり、昭和51年当時からすでに外国人観光客や外国人居住者が当たり前のようにいたもの。それに加えて大学生比率が日本で最も高い都市だったことから、海外留学もすでに盛んだったのである。

ひなたの家にビリーを連れてきた小夜子はおそらく外国人講師から生の英語を学んでいそうだ。トップ画像ともに©NHK

「そういった環境ゆえ英語学習熱も高く、しかも英語教室にはネイティブの英語教師が当時から珍しくありませんでした。小学生が外国人から生の英語を学べる環境が整備されており、小夜子のように小五ながら英会話を交わせる例も決して珍しくはなかったのです。それに対して地方では街なかで外国人を見かけることが稀で、英語教室の講師は大学で英語を専攻した日本人がほとんど。海外ドラマを観る環境もなく、生の英語に接する機会はほとんどありませんでした」(前出・ライター)

 その当時、地方在住者で海外旅行経験を持つ人は少なかったもの。都会の大学に進んだ学生が、自宅通いの同級生から海外旅行経験を聞いて驚く例も珍しくなかったという。大学に入って初めて外国人と接したという地方出身者も珍しくなかった昭和の時代にビリーと出会っていたひなた。そんな空気感を「カムカムエヴリバディ」では上手く再現しているようだ。