あの四角いアイテムは何? 令和の視聴者にはそんな疑問を抱いた人も多いようだ。
2月7日放送のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第68話では、ヒロインで小学5年生の大月ひなた(新津ちせ)がラジオ英語講座を始めることに。大月家にはすでにトランジスターラジオがあるものの、英語講座は福引で当てた旧式の真空管ラジオで聴いていた。
そんなひなたが好きなテレビ番組は連続時代劇ドラマの「棗黍之丞」。両親のるい(深津絵里)と錠一郎(オダギリジョー)が京都に引っ越してきた昭和39年当時にはテレビそのものがなかった大月家だが、物語の昭和51年時点では14型らしきカラーテレビを持つ程度に、家計に余裕ができていたようだ。
「そんな大月家は、ひなたが通いたいという英語教室の月謝を出すのも厳しいというわりには、意外に家電などの家庭用品が揃っています。台所にはガス給湯器が設置され、風呂場は昭和30年代以前の家屋には珍しく入口が折り戸になっていました。2ドア式の冷蔵庫はるいの身長ほどもある大型で、1ドア冷蔵庫の家庭も珍しくなかった昭和51年としてはわりと充実した台所だと言えるでしょう。その中に一つ、多くの視聴者にとって謎のアイテムがあるというのです」(昭和を知るベテランライター)
それは台所のワゴンに置かれた四角い箱のようなアイテムだ。表面には当時の流行だった花柄が描かれており、パッと見は何かのケースのようにも見える。実はこれ、昭和の家庭にはありふれていた家電製品だというのである。
「その正体はポップアップトースターに間違いありません。当時はただ『トースター』と呼ばれており、上側から食パンを投入し、焼きあがると自動的にポンッと跳ね上がるという代物です。現在ではパンを平置きで焼くオーブントースターに取って代わられていますが、昭和の時代にはトーストといえばポップアップトースターで焼くのが当たり前だったものです」(前出・ライター)
今でも売られているポップアップトースターだが、若い世代には見たことも聞いたこともないという視聴者が少なくないことだろう。大月家ではほかにも、電気ポットではない魔法瓶や手回し式のミキサーらしき台所用品も使われているようだ。
「ポップアップトースターではタイマー式のほか、内蔵されたサーモスタットの働きにより、焼き上がりのタイミングで自動的にトーストが飛び出る製品もありました。どちらのタイプでも焼き時間が足りずに生焼けだったり、もしくはパンが真っ黒こげになることもしばしば。いかにも昭和クオリティのレトロさを懐かしく思い出した視聴者もいたのではないでしょうか」(前出・ライター)
そんな大月家にもいつかはパソコンやスマホが来るのでは。ひなたと同世代にあたる50代の視聴者は、そんな感慨を抱いていそうだ。