なぜ算太はシラを切るように横を向いたのか。その表情に何かを感じた視聴者も多かったようだ。
2月24日放送のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第81話では、ヒロインの大月ひなた(川栄李奈)が振付師のサンタ黒須(濱田岳)とお互いに自己紹介する場面が描かれた。
前回、映画村のテレビCMを撮影している現場に突然現れ、さんざんダメ出ししたあげくに自らの発案でCMを作り変えさせていたサンタ。その正体は、ひなたの祖母・安子(上白石萌音)の兄である橘算太だったのである。
その算太は、実家である岡山の「御菓子司 たちばな」を妹の安子と一緒に再興しようとしていたが、物件を契約するために岡山から大阪に出向いた際に開業資金を持ち逃げ。そのまま失踪してしまっていた。そこから33年経った昭和59年時点では、初老の振付師となっていたのである。
「算太は若いころ、岡山の実家を出て大阪でダンサーを目指したものの、講師を務めていたダンスホールが閉鎖されたことで帰郷。しかし借金取りに追われていることが判明し、実家から勘当されてしまいました。失踪後の行方は不明でしたが、どうやら大阪で振付師として成功していた模様。人気時代劇俳優の二代目桃山剣之介とは“ダンゴちゃん”呼ばわりするほどの仲で、剣之介がまだ桃山団五郎と名乗っていたころからの付き合いのようです」(テレビ誌ライター)
そんな算太とひなたは血縁関係ではあるものの、ひなたは大叔父の算太についてはおそらく何も知らないようだ。母親のるいは自分が母・安子に「大嫌いじゃ」と告げてアメリカ行きの原因になったことを気に病んでおり、昔のことは語りたがらない様子。
そんな経緯もあってひなたは、母親の旧姓が雉真であることは知っているかもしれないが、祖母の旧姓が橘であることまでは知らないだろう。ましてや算太という大叔父がいること自体、まったく知らなくても不思議ではない。
そんなひなたに出会った算太は、なんとも怪しげなそぶりを見せたというのである。
「撮影所の休憩室でひなたから自己紹介された算太は、最初こそ『可愛ぇのぉ』と愛想よくしていたものの、ひなたから『サンタさん楽しそうですね、踊っている時。なんやこっちまで楽しなります』と笑顔で言われた途端、目を逸らすことに。そこからはほとんどひなたを見ることなく、とぼけた表情でそっぽを向いたまましゃべっていたのです」(前出・テレビ誌ライター)
不自然なまでにひなたから視線を外す算太。その姿に一部の視聴者からは、<算太はひなたのことを知っている?><ひなたの表情に安子の面影を感じたのでは>といった声が続出しているようだ。
「ひなたの母親であるるい(深津絵里)は17歳で岡山を出て、大阪・道頓堀のクリーニング店にて住み込みで働いていました。そうなると大阪で振付師として活動していた算太が、何かしらの偶然でるいの存在に気付いた可能性もありそうです。妹の安子は岡山の大手企業・雉真繊維の嫁であり、娘のるいも同じ雉真という珍しい苗字を名乗っていますからね。それに、るいの夫である大月錠一郎(オダギリジョー)は関西トップクラスのトランぺッターでしたから、同じエンタメ業界に籍を置く算太なら錠一郎の存在を知っていても不思議はありません」(前出・テレビ誌ライター)
そうなると、算太は同じ大阪に妹・安子の娘がいることを知っており、実力派トランぺッターと結婚して大月姓になったところまでは知っていたのかもしれない。
しかも錠一郎が名前を知られる存在だったことから、トランペットを吹けない奇病にさい悩まされ、妻と一緒に京都に引っ越したところまで、耳に入っていても不思議はない。それに加えて偶然の出会いが、算太とひなたを引き寄せていたかもしれないというのである。
「ひなたは小学生のとき、二代目剣之介のサイン会に参加。母親が焼く回転焼きをプレゼントしたことがきっかけで、剣之介は『回転焼 大月』の回転焼きを自身の差し入れ用として時おり大量購入するようになりました。そのあんこは、るいが母親の安子から受け継いだ『御菓子司 たちばな』の味そのもの。そうなると剣之介から回転焼きをもらった算太が、大月という店名とあんこの味からその回転焼きがるいの手によるものであることに気づいたのかもしれないのです」(前出・テレビ誌ライター)
それゆえ大月ひなたを名乗る映画村職員が、算太の振付を「楽しそう」と笑顔で評した姿に、妹・安子の面影を感じていた可能性もありそうだ。果たして算太は姪孫であるひなたのことを認識しているのだろうか。二人の関係がどうなっていくのか、視聴者としても楽しみで仕方がないことだろう。