なぜその時間なのか? 違和感を抱いた視聴者も少なくなかったようだ。
3月24日放送のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第101話では、アメリカ旅行に旅立っていた大月るい(深津絵里)が、トランぺッターのトミー北沢(早乙女太一)と共に帰宅するシーンが描かれた。
6歳の時に進駐軍将校と共に渡米していた母親の安子(上白石萌音)を探しに、アメリカに行きたいとの願いを抱いていたるい。それが今回、夫の錠一郎(オダギリジョー)が音楽活動を再開し、トミーのバンドでピアノを担当するようになったことにより、演奏旅行として念願のアメリカに渡ることができていた。
自宅では現ヒロインで娘のひなた(川栄李奈)が留守番しており、彼女が朝ドラを観ていると、そこに帰ってきたるい。なんでも空港からトミーの付き人が運転する車で、京都の自宅まで送ってもらったという。その場面に一部の視聴者から「それはおかしい」との声が続出していたというのだ。
「るいとトミーによると二人は空港から直行してきたようで、帰宅時には朝ドラの画面が朝の8時16分を示していました。そうなるとアメリカから帰ってきたフライトは、朝6時ごろには関西国際空港に到着していたことになりますが、そんな時間に北米から到着するフライトなど存在しないのです」(トラベルライター)
北米から日本へのフライトは時差の関係から、現地を昼ごろに出発し、日本には夕方に到着するというパターンがほとんど。最近は現地を深夜0時過ぎに出発し、日本には早朝に到着するフライトもあるものの、物語の舞台である1999年当時にそういったスケジュールで飛ぶ北米便はなかったのである。
ただ今回、東京に住んでいるトミーが同行していたことから、アメリカから関空に直行したのではなく、いったん成田空港にて帰国した可能性もある。それなら、東京・羽田空港から大阪・伊丹空港までのフライトを利用していたのではないだろうか?
「羽田・伊丹便を利用した可能性もありえません。というのも伊丹空港には厳格な運用時間が定められており、すべてのフライトは午前7時以降の離発着となるからです。しかも羽田・伊丹便は初便でも7時30分到着ですから、そこから荷物を引き取って京都まで車移動した場合、平日朝の混雑する時間帯では1時間以上かかることは確実。どうあっても8時16分に京都の自宅に帰ってくることは不可能ですね」(前出・トラベルライター)
このようにアメリカから帰国したのであれば、夕方のシーンにすれば不自然さはなかったはず。それをなぜわざわざ朝ドラの途中にしたのだろうか。テレビには1998年度後期のNHK連続テレビ小説「やんちゃくれ」の最終回が映っており、この日が1999年4月3日であることが明確に示されていた。
その一方で今回の終盤には、アメリカからハリウッド映画の視察団が来日。ひなたが勤める条映太秦撮影所を訪れていた。なんでもハリウッドが日本の時代劇を撮るという触れ込みだ。そこに、朝ドラの画面を映した理由が隠されているというのである。
「ハリウッドと時代劇と言えば、誰しもが思いつくのはトム・クルーズ主演の映画『ラスト・サムライ』でしょう。ただ同作は2003年12月の封切りで、日本国内での撮影が2002年10月に始まっていたこともあり、同映画の視察団が1999年に来日というのはタイミング的に早すぎるのは明らか。しかし現実の映画に合わせて作中の時間軸を進めるわけにもいかず、物語の舞台が1999年であることを示すためにあえて、当時の朝ドラをカレンダー代わりに使ったのかもしれません」(芸能ライター)
いずれにせよ、時代考証やことば指導がきっちりとなされている「カムカムエヴリバディ」にて、なぜフライトの時間がないがしろにされたのか。もしかしたら制作陣に飛行機旅行好きがいなかったのかもしれない。