料理のことが分からないと、こうなってしまうのか。食べるのが好きな視聴者はため息をついていたようだ。
6月17日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第50回では、イタリア料理店「アッラ・フォンターナ」で働くヒロインの比嘉暢子(黒島結菜)が、妹の歌子(上白石萌歌)と一緒にフランス料理店を訪れた様子が描かれた。
フォンターナの大城房子オーナー(原田美枝子)から、店の新しいメイン料理を考えるという試験を課せられていた暢子。彼女は故郷・沖縄のイカスミジューシーをヒントに「イカスミパスタ」を作り、見事に合格を果たしていた。
そのご褒美なのか、オーナーから「勉強のために」ともらったのが有名店「レストラン ダングラール」のお食事券。大喜びの暢子は歌子と一緒に同店で食事し、「でーじ美味しかった!」と大満足だ。だがそんな場面に、疑問の声があがっていたというのである。
「なにより疑問なのは『ダングラール』という店名。これは19世紀の名作小説『モンテ・クリスト伯』(巌窟王)に登場する会計士(のちに男爵)のダングラールにちなんでいることは確実でしょう。ところが当のダングラールは主人公のダンテスを欺き、虚偽の密告状を作ってダンテスを投獄させた張本人です。物語の後半ではダンテスの復讐で無一文になりますし、そんな悪役の名前をレストランの名前に付けるものでしょうか?」(女性誌ライター)
もっとも、どんな名前を付けようともそれはオーナーの自由。あえて不格好な名前を付けることで、店の繁栄を願うという考え方もあるのかもしれない。
だがもう一つ、「人気のフランス料理店」という触れ込みにそぐわない描写も、今回は見受けられたというのだ。
「店を出た歌子は『チョコレートケーキ、初めて食べた~♪』と嬉しそうにつぶやきました。しかしフランス料理店で供されるのはあくまで『ガトーショコラ』のはず。そもそも沖縄の片田舎である山原村で生まれ育った歌子なら、ガトーショコラを食べて『あ、チョコレートケーキのことか』と思うことすらないでしょう。わざわざオーナーが、暢子や歌子が普段なら行けないような高級店のお食事券を用意してくれたんですから、ここはガトーショコラに感動すべき場面です」(前出・女性誌ライター)
しかもこれらの場面には視聴者から<なぜ肝心のフランス料理を一切映さない?><食事シーンが見たかった>といった不満の声もあがっている。なにしろヒロインは料理人なのだから、ここはむしろフランス料理のコースを積極的に見せていくべき場面だろう。
しかし本作では、あえてそういった描写を避けたり、不自然なメニュー名が使われる理由があるというのだ。
「なにしろ本作の制作陣は自ら『ここで白状しますと、僕たちおじさん3人は料理の知識が全くないんです』と明かしていますからね。これは番組の公式ムックに掲載された座談会でのセリフ。料理そのものは専門のスタッフに作ってもらえるものの、脚本に盛り込む内容はそのおじさんたちの頭の中から出てくるのですから、こんな見当はずれの店名やメニュー名になってしまうのでしょう」(前出・女性誌ライター)
それに比べれば「アッラ・フォンターナ」(「泉へ」を意味するイタリア語)はまだずいぶんとマシな命名というところか。イタリア人に笑われるような店名でなかったことに、視聴者としても胸を撫でおろしたいところだろう。