【ちむどんどん】母親への暴言に表れた、和彦が愛との婚約を破談にしたワケ!

 どうやら彼の行動原理は、ある意味で一貫していたようだ。

 7月28日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第79回では、新聞記者の青柳和彦(宮沢氷魚)が、母親の重子(鈴木保奈美)に対して暴言を吐く姿が描かれた。

 沖縄出身のヒロイン比嘉暢子(黒島結菜)との結婚を決意するも、重子から猛反対されている和彦。家柄の違いや働く女性との結婚を問題視する重子に対し、和彦は「僕は母さんみたいな奥さんが欲しいわけじゃない」と言い放ったのだった。

 あまつさえ「むしろそんな女性は嫌だ」と母親を全否定してみせる和彦。暢子には夢があり、その人生はキラキラ輝いていていつも充実していると大絶賛だ。そんなことを言われたら、重子が「母さんの人生は否定するのね」と言って席を立ったのも当然だろう。

 どこまでもすれ違う母と息子。だがほとんどの視聴者は重子の主張に耳を傾け、和彦の言動を身勝手だと断罪していた。そんな和彦の考え方こそが、長年の交際を経て結婚式まで決めていた大野愛(飯豊まりえ)との破談に至る原因になっていたという。

「母親は明らかに愛との結婚を望んでいました。愛の両親は高級住宅地の東京・白金台にマンションを所有しており、叔父のはからいで高輪のホテルで結婚式場を押さえられるという裕福な家庭。休日には銀座のイタリア料理店で高価なランチを楽しむようなお嬢様でした。そして愛自身も、和彦と同じ東洋新聞社に入社する際には、結婚する時に仕事を辞めると親と約束していたもの。このように愛はもともと、重子が息子の嫁に求める条件をすべて兼ね備えていたのです」(テレビ誌ライター)

 さすがに重子とは異なり、愛は電車の乗り方を知らないわけでもなく、家事に関しても作中で鮮やかな包丁さばきを見せていた。とは言え重子が重視する家柄の問題はクリアされており、全国紙の記者になるほどだから学歴面も優秀だったはずだ。

 しかし、新聞記者の仕事に打ち込む姿は「働く女性」が大好きな和彦にもピッタリだったはず。それなのになぜ、和彦は愛との交際を「すべてなかったことにしてくれ」といって断ったのだろうか。

「学究肌の父親が大好きだった和彦。その父親とそりが合わない母親のことを次第に敬遠するようになり、しまいには母親が望む《青柳家にふさわしい嫁》すら拒否するようになったのでしょう。つまり愛との破談は、歪んだ形のマザコンが発露した結果だったワケです。一方で《理想の嫁》とは真反対の性格や属性を持つ暢子に、いつしか惹かれていったのも納得できるところ。和彦はあくまで暢子の《母親的じゃないところ》に惚れたのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)

 母親への反発心がいつしか、母親の理想を体現した愛に対しても発露されていたことは想像に難くない。結局のところ、自分が最も否定している「母親の価値観」に囚われていたのは、和彦自身だったのである。

「母親的な女性」を否定したあげく、和彦は愛をも否定してしまったのか。トップ画像ともに©NHK

 しかし和彦が幼いころから何不自由なく育ち、優秀な学歴に加えて新聞記者という社会的ステータスの高い仕事に就いていることは紛れもない事実。本人はいつでも記者を辞めて沖縄研究に没頭したいようだが、それは生活に苦労した経験がないお坊ちゃまゆえの発想だろう。

「重子は決して、自分がたどった道を和彦に押し付けているわけではありません。彼女自身は両家の決めたことに従って結婚しましたが、息子の和彦には好きなように嫁選びを任せていましたからね。その時点で母親の愛は十分に発揮されているのに、何不自由なく育った和彦にはそんな重子の想いも届いていないのでしょう」(前出・テレビ誌ライター)

 まさに「親の心子知らず」といったところか。一方で暢子への愛情についても、本当の貧乏を体験している暢子のことを、和彦が心から理解できるとは到底思えないところだ。果たして和彦と暢子の結婚は成就するのか、結婚したところで長続きするのか。視聴者も不安でならないことだろう。