【ちむどんどん】田良島が変節?和彦が誠実な若者と評される「暢子が絶対善の世界」とは

 多くの視聴者に好かれていた良識派の彼はどこに行ってしまったのだろうか? その「変節」が大いに残念がられていたようだ。

 8月1日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第81回では、青柳和彦(宮沢氷魚)が勤める東洋新聞社の学芸部に、母親の青柳重子(鈴木保奈美)が訪れる姿が描かれた。そこで上司の田良島デスク(山中崇)と交わした会話に失望する視聴者が続出していたという。

 和彦は沖縄出身のヒロイン比嘉暢子(黒島結菜)との結婚を決めるも、母親の重子は「家の格が釣り合わない」として猛反対。この日はついに息子の職場にまで押しかけて、田良島に「息子と比嘉暢子さんの結婚に反対してください」と無理筋の直談判に至ったのであった。

 しかし田良島は和彦の結婚に反対する気はなく、重子の狙いを「自分が面倒な母親役を演じること」だと喝破。和彦と暢子の二人が周りに迷惑をかけていると罪悪感を抱き、そこから二人の仲はだんだんおかしくなるとの目論見だと見破っていたのである。

「そんな田良島に重子は『息子が不幸になるのを指をくわえて見ているわけにはいきません』と、母親としては当然の想いを吐露。すると田良島は、若者はいつも自分の力で障害を乗り越えるとの考えを口にし、『とくに和彦くんのように意志が強く、誠実な若者は』と念押ししました。さらには『披露宴でお会いしましょう』と、重子のことを突き放したのです」(テレビ誌ライター)

 田良島がまたもや男気を見せたこの場面。これまでも様々な場面で「大人」を見せつけてきた田良島ならではの見せ場だったと言えるだろう。

 しかしほとんどの視聴者はこの場面で田良島に肩入れするのではなく、むしろ母親の重子を応援。田良島の「変節」を大いに嘆いていたのであった。

「なにしろ和彦は同じ学芸部の同僚で、長年の恋人だった大野愛(飯豊まりえ)との婚約を一方的に破談していましたからね。しかも『すべてなかったことにしてくれ』と一方的に別れたあげく、その数日後には暢子にプロポーズするという変わり身の早さを発揮。常識的に考えれば、愛と長年一緒に働いてきた学芸部の同僚たちが、和彦を“誠実な若者”だと考えるはずもないのです」(前出・テレビ誌ライター)

 それなのに田良島は、暢子が学芸部でボーヤ(雑用係)としてアルバイトしていたことに触れ、「ここの連中のほとんどはあの子の顔見知りですから、彼女の耳にも入る」と説明。まるで学芸部の部員全員が、暢子の味方であるような口ぶりだったのである。

 たしかに暢子は明るい性格で人に好かれやすく、おっちょこちょいなところも魅力の一つ。ボーヤ時代には学芸部のマスコット的な存在として可愛がられていたものだ。

昭和40年代の新聞社であれば若くて可愛い暢子が可愛がられるのも当然だったが…。トップ画像ともに©NHK

 とは言え愛は長年、学芸部の仲間たちと一緒に働いてきた“戦友”。その愛から婚約者の和彦を“略奪婚”したという事実は動かしがたく、部員たちが和彦と暢子の結婚にもろ手を挙げて賛成するなど、常識的に考えても有り得ないことではないか。

「結局のところ『ちむどんどん』において、ヒロインの暢子は常に“絶対善”なのでしょう。だからどんな失敗をしでかそうが無理を通そうが、周りは必ず暢子に同調し、応援する運命なわけです。良識派の大人として描かれてきた田良島は本来なら、酷い棄て方で婚約者の愛と別れた和彦をたしなめるべき立場。しかし作中では常に暢子が正しいのですから、田良島もその世界観に沿った振る舞いを強いられているのでしょう」(前出・テレビ誌ライター)

 つまり田良島は変節したのではなく、そもそも暢子中心主義の世界観に従って行動しただけということか。この調子だと今後も、暢子が繰り出すあらゆる無理筋な行動に周りが従うのは火を見るよりも明らか。どうやら重子もあっさりと、暢子の前に陥落することとなりそうだ。