見るに堪えないとはこのことか。視聴者も堪忍袋の緒が切れてしまったかもしれない。
11月25日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第40話では、ヒロインの岩倉舞(福原遥)が航空学校の座学課程に合格。帯広でのフライト課程に進む前に、実家のある東大阪に戻る場面があった。そこで繰り広げられた数々の“ありえない描写”に視聴者が怒り心頭だという。
その一つ目は「金の宇宙人ビリケン」。いったい何のこっちゃという話だが、そう表現するしかないような異様な物体が登場したのである。これは東大を卒業して電機メーカー社員になったはずの兄・悠人(横山裕)が実家の両親宛てに送ってきたもの。
本人は間違って二つ購入したと語っていたが、もはやその謎解きすら知りたくないという視聴者がいるほどに、違和感づくしの代物だった。
二つ目は舞の幼馴染で看護学校で学ぶ望月久留美(山下美月)のもとに、父親の佳晴(松尾諭)が訪ねてきた場面だ。舞は久留美のバイト先であるラグビーカフェの「ノーサイド」で久留美と談笑。すると佳晴が現れ、なんと久留美に金を無心したのである。
「佳晴が仕事の続かない性格であることはこれまでにも描かれていましたし、時には家賃にすら事欠き、久留美のバイト代で補っていたことも視聴者は知っています。とはいえ今回は真昼間から久留美に金をたかっていたのですから、いくらダラしない佳晴とは言え、さすがにキャラ変しすぎでしょう。脚本家が変わった第8週からは登場キャラが全員、極端な性格を示すようになりましたが、さすがに今回の佳晴はやり過ぎ。みんなが大切にしていた世界観がどんどんと壊されていく脚本や演出に、視聴者は嫌悪感しか抱いていないようです」(テレビ誌ライター)
そして3つ目の「ありえない描写」には、時代考証の誤りすらも見受けられたという。これはもはや作品の方向性や新たな試み以前の問題であり、単なるミスと糾弾せざるを得ないのではないか。
それは舞も写っている航空学校同期生の集合写真に、カフェ店主の津田(たくませいこ)が反応した場面だ。久留美が「誰か気になる人おらんかったん?」と訊ねると、津田は当てたるわと言って柏木(目黒蓮)を指さすことに。
柏木が苦手な舞は「それはないです」と真顔で否定。だが面接試験でも舞と柏木が一緒だったと知った津田は、「そら運命やんか。気ぃついたらフォーリンラブや! 恋に落ちてるやつやんか」と絶叫したのである。
「この発言に視聴者からは《津田さんはこんなこと絶対に言わん!》との批判が噴出。それに加えて『フォーリンラブ』という単語を使ったこと自体、考証ミスとの指摘もあるのです」(前出・テレビ誌ライター)
フォーリンラブと言えば、バービーとハジメによるお笑いコンビ「フォーリンラブ」の決めゼリフとしても有名。同コンビがテレビに出まくっていた当時なら、津田がそのセリフを口にしても不思議はないかもしれない。
しかしフォーリンラブの結成は2007年で、一発屋として人気を博したのは翌2008年のこと。それに対して「舞いあがれ!」第40話では2007年4月を描いており、そもそも世間に「フォーリンラブ」という単語はほとんど浸透していなかったのである。
「ツイッターでも2007年5月以前に『フォーリンラブ』という単語は1件しかヒットせず、当時、人口に膾炙していたとはとても言えません。もしかしたら脚本家は作品の時代設定を勘違いしてしまい、当時すでにお笑いコンビのフォーリンラブが人気だったと思い込んでいたのではないでしょうか。そうだったらあまりにケアレスミスに過ぎるというものです」(前出・テレビ誌ライター)
なお、三原順子(現・三原じゅん子)の歌う「だって・フォーリンラブ・突然」がリリースされたのは1982年のこと。よもや25年も前の曲が津田のなかではマイブームにでもなっていたのか。ともあれなんとも不可解なセリフは、視聴者に不快感だけを与える結果となっていたようだ。