地元の道を知る大阪人にとっては「え、なんで?」と映っていたかもしれない。
1月26日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第80回では、ヒロインの岩倉舞(福原遥)が株式会社IWAKURAの営業車を運転する姿が描かれ、視聴者を驚かせた。その場面に不自然な点が見受けられたという。
営業の途中と思われる舞は、大阪城を見渡す場所にあるコインパーキングに駐車。すると長崎・五島に住む祖母の祥子(高畑淳子)から電話があり、しばし車中で会話を楽しんでいた。
会話を終えた舞はスマホをカバンにしまい、シフトレバーを操作して発進。コインパーキングを出て左折し、東に向けて走り去っていった。その道は土佐堀通で、真っ直ぐ進めば大阪府道168号線として東大阪に抜ける道。どうやら東大阪市のIWAKURAに帰社するようだ。
そんな何気ない日常を描いた場面に、どうにも不自然な箇所があったという。
「最初に舞が車を停めていた場所からは、大阪城のお堀が見えました。ここはタイムズ大阪城京橋口という駐車場で、『大阪城の見えるタイムズです』が売り文句。それに対して舞が出てきた駐車場はタイムズ片町1丁目第3であり、先ほどの駐車場からは土佐堀通を挟んで反対側にあります。つまり舞の運転する営業車は二つの駐車場をワープしていたのです」(大阪出身のライター)
単に駐車シーンを撮りたいだけならNHK大阪の敷地内でもよさそうなものだが、ここはあえて大阪城を画角に入れ込むことで、大阪らしさを演出していたのだろう。舞が小学生や大学生だったときには東大阪市の街なかでロケしたシーンもあったが、IWAKURAが舞台になってからは皆無(※実在する工場内でのロケを除く)。大阪っぽさが薄れていたことから、ここはあえて五島と大阪を対比したかったのかもしれない。
とはいえ一つの場面を撮るのになぜ、二カ所の駐車場を使い分けていたのか。そこには制作側のこだわりが垣間見えていたようだ。
大阪城を背景にした絵には「大阪市内を営業で走り回る舞」を強調する説得力がある。それゆえお堀に面した駐車場でロケしたのも納得だ。ところがその駐車場から道路に出た場合、大坂橋という大きな歩道橋が邪魔になって抜け感のある絵が撮れないのである。
「それに対して反対側の駐車場から出れば、障害物のない絵を撮影可能。しかも歩道橋上でカメラを構えることができるという利点もあります。二つの駐車場同士が近いことも、ロケ隊の移動を最小限に抑えられることから、この場所は実に好都合だったのでしょう」(前出・大阪出身のライター)
この場面には視聴者からは<土佐堀通だ!><京橋方面に走っていった>といった感想が続出。大阪府民がビビッドに反応していたあたり、制作側の狙いはズバリ当たっていたようだ。