埼玉県知事が「プール撮影会中止」の撤回を指導!全面禁止の方針も撤回されるのか

 埼玉県の大野元裕知事は6月11日の夜、埼玉県営プールの指定管理者である公益財団法人埼玉県公園緑地協会に対して、「水着撮影会」への中止要請を撤回するように指導したことを明らかにした。

 大野知事は公式ツイッターにて「県営プールでの水着撮影会について経緯と状況についてご報告します」として、4件のツイートを連投。6月10日~11日に「しらこばと水上公園」などの県営プールで開催される予定だった水着撮影会が、公園緑地協会の中止要請により中止に追い込まれたことについて言及した。

 これらの中止要請について大野知事は「明確な許可条件が定められていない施設において、他の施設の条件を当てはめイベントを中止させること」、および「条件策定後に違反が認められない者に対し中止させること」は適切ではないとの旨を公園緑地協会側に伝えると報告。「中止要請を撤回すべき旨を指導しました」と明かしている。

 この「指導」とは、地方自治法第244条の2第10項を根拠にするとの指摘もある。同法では「普通地方公共団体の長又は委員会は、指定管理者の管理する公の施設の管理の適正を期するため、指定管理者に対して、当該管理の業務又は経理の状況に関し報告を求め、実地について調査し、又は必要な指示をすることができる」と定めており、その“指示”に該当するというものだ。ともあれ埼玉県知事が法律に則って指示を出した事実は重い。

 今回の騒動は、日本共産党の埼玉県議会議員団による県への申し入れが発端だ。同県議団では6月6日付けのツイートにて「貸し出しを禁止するよう県に申し入れました」と明かしたほか、6月8日には公式サイトにて「県営公園での過激な『水着撮影会』の貸出中止を埼玉県に求める」とのタイトルで、県への申し入れを報告していた。

 このツイートは実に2500万回以上も表示され、4600件を超えるリプが付くことに。そのほとんどが同議員団に対する抗議や反論であり、主催者や出演者、ファンからの反発に加えて、弁護士や国会議員からはこれらの申し入れ自体に基本的人権を損なう憲法違反の恐れがあり、「権力の濫用」との指摘も続出していた。

フレッシュ撮影会を主催する株式会社エーテルでは、開催のわずか2日前に中止の発表を余儀なくされていた。

 今回、大野知事が「中止要請の撤回」を指導したことで、埼玉県営プールでの水着撮影会は命脈を保ったようにも思われる。しかし6月10日~11日に予定されていた4件のプール撮影会はすでに開催中止となってしまった。6月9日に中止を発表した6月24~25日の「近代麻雀水着祭2023」(しらこばと水上公園)に関しても、再び開催へと舵を切るのか。そのハードルは決して低くない。

 一部の撮影会では代替場所を確保したうえでの振替開催を発表しているが、本来予定されていたプール撮影会の中止に伴う損害は不可避。この撮影会に向けて飛行機やホテルを確保していたファンにも損害が発生している。

 そして予断を許さないのが、今後も「水着撮影会」が開催できるかどうかだ。デイリー新潮の6月9日付記事では、埼玉県公園緑地協会が取材に対して「水着撮影会に関しては今後受けない」と断言したと報道。すなわち水着撮影会の全面禁止である。

 この件については大野知事も、6月11日夜のツイートにて「今後の水着撮影会の開催の在り方」に言及。「意見も募りながら、専門家を交えた検討を協会に依頼しました」と明かしている。

 その検討とはいったいどういうものなのか。水着撮影会の全面禁止まで想定しているのか、それとも水着撮影会の開催に関して詳細なレギュレーションを決めるものなのか、現時点では判然としていない。

 さらに「専門家」がどういう顔ぶれになるのかも不明だ。よもや開催中止を申し入れた共産党の県議団も含まれるのか、そして撮影会の主催者や出演者などの当事者は含まれるのだろうか。騒動を見守る人々としても気が気でならないところだろう。

 今回の騒動の舞台となった「しらこばと水上公園」では2018年からプール撮影会が開催されてきたという。古くは遊園地の「としまえん」(2020年に閉鎖)で長年にわたって開催されてきた歴史があり、プール撮影会はグラビア業界における夏の風物詩となっていた。

 その一大イベントが存続の危機に瀕した今回の騒動。大野知事による「中止要請の撤回指示」を経て、雨降って地固まるとなるのか。それとも「プール撮影会の全面禁止」という最悪の結果を迎えるのか。2023年の夏はグラビア業界のみならず、表現の自由や経済活動の自由を包摂した「自由の危機」として、多くの人に長く記憶される年となるのかもしれない。