制作スタッフも楽しみながら仕事をしているのではないだろうか。NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」にて再現されている昭和51年当時の世相に、視聴者が興味津々のようだ。
2月8日放送の第69話では、ヒロインの大月ひなた(新津ちせ)がキャンディーズの「春一番」を歌いながら帰宅する場面が。同曲は昭和51年3月1日の発売で、当時の子供なら誰でも口ずさむことのできた大ヒット曲だった。それを令和のリアル小学生である新津が歌っている場面に、親世代の視聴者は大きな感慨を覚えていたのではないだろうか。
ひなたが釘付けになっているテレビ番組では「8時だョ!全員集合」(TBS系)やアニメ「サザエさん」(フジテレビ系)、そしてアニメ「母をたずねて三千里」(同)など、まさに昭和51年初夏に放送されていた作品が話題となることに。とくに「母をたずねて三千里」は同年の1月4日~12月26日放送とドンピシャであり、その細やかな時代考証には感心するばかりだ。
しかも、画面にはほんのちょっとしか映らなかった細かすぎる場面にも、当時の世相が反映されていたのである。
「アメリカの場所を知りたいひなたは茶の間に地球儀を持ってきました。ここでほんの一瞬だけヨーロッパが映し出されると、ドイツが2色に塗り分けられているのが見えたのです。当時は東ドイツと西ドイツに分かれていた時代で、地球儀や世界地図でも東西ドイツは別々の色で塗られていたもの。こんなところにまで気を配っているのかと、朝ドラ制作陣の執念には驚かされましたね」(テレビ誌ライター)
そんな世相はひなたの母親るい(深津絵里)が営む回転焼きの店にも反映されている。昭和39年の開店当初には1個10円だった回転焼きが、昭和50年代には1個60円に値上がり。当時はオイルショックを経てあらゆる物価が急激に上昇していたのだ。その後40年ほどが経過した現在では2倍の120円程度に収まっていることから、昭和30~50年代の値上がりがいかに激しかったのかが伺えるだろう。
そういった精緻な時代考証の一方で、<これは違うのでは?>との声が相次ぐ箇所もあったという。それはひなたが通う小学校だというのだが…。
「ひなたの教室では机が横8列、縦4列に並べられており、1クラス32人になっています。これは昭和51年当時としては少なすぎますね。学級編成の生徒数は法律(※)で定められており、作中の時点では1クラス45人という決まりでした。それが現在では二度の改定を経て35人に減っており、教室のセットは現在の基準をもとに作られているようです」(前出・テレビ誌ライター)
※公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律
この「カムカムエヴリバディ」では珍しい時代考証ミス。ただ45人編成のクラスを再現するとなると子役の手配も大変だろう。それに教室のセット自体、他の番組で使われているセットを流用している可能性もある。ともあれ物語の本筋に関係ないところは、目をつぶっても差し支えないと考えるのが吉なのかもしれない。
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