3月1日~5日にドイツで開催された「第71回ベルリン国際映画祭」にて、濱口竜介監督の「偶然と想像」が審査員グランプリ(銀熊賞)を獲得した。この銀熊賞は1965年に制定された由緒ある賞で、グランプリの金熊賞に次ぎ、監督賞や男優・女優賞といった各部門賞に贈られるものの一つ。邦画としては1987年の「海と毒薬」(熊井啓監督)に続く2回目の受賞となった。
この「偶然と想像」は3つの短編映画で構成されており、第一話の「魔法(よりもっと不確か)」で主演を務めた24歳の若手女優、古川琴音にも大きな注目が集まっている。カメレオン女優とも称される古川が演じたのは、親友の気になる相手が自分の元彼であることに思案するモデルの役。今回の受賞に際して古川は「とても嬉しい。俳優として身の引き締まる思い」とコメントしている。
「彼女の名前を知らない人でも、JTのテレビCM『想うた 姉妹を想う』において『お姉ちゃん、髪切ってよ』と話す妹役と聞けば、そのイメージがつくはず。2020年度前期のNHK連続テレビ小説『エール』では、窪田正孝と二階堂ふみが演じる夫婦の一人娘・古山華を演じて注目されました。ほかにも映画『十二人の死にたい子どもたち』ではバンドマンを崇拝するゴスロリ少女のミツエ役を務めており、映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』や『凪のお暇』など様々な作品に出演しています」(映画ライター)
その古川は中学・高校時代を演劇部で過ごした。そして就職活動をきっかけに、安藤さくらなどの個性派俳優を輩出する芸能事務所のユマニテに履歴書を送ったことが女優人生の始まりになったという。
少し幼い雰囲気と独特な話し方で、一度見たら忘れられない雰囲気を醸し出すのが彼女の持ち味。昨年には大きく活躍の場を広げ、ドラマ「絶対零度〜未犯罪潜入捜査」(フジテレビ系)のゲスト出演で大きな爪痕を残したほか、前出の「エール」やドラマ「この恋あたためますか」(TBS系)のレギュラー出演で注目を浴びることになった。
「古川はコロナ禍の自粛期間中に毎日ボイストレーニングを続け、声域が広がったことにより表現の幅も広がったそうです。『この恋あたためますか』では中国人アルバイトの李思涵を演じるために中国語の練習にも力を入れ、美しい発音を披露。その甲斐あってか動画配信サービスのParaviで放送されたスピンオフ作品『その恋もう少しあたためますか』では、主要キャスト4人の一人に選ばれています。このように中学生役から中国人役までを演じ分けつつ、共演者から学ぶ姿勢を忘れない姿には、女優としての伸びしろの大きさが期待できます」(前出・映画ライター)
古川は現在、菅田将暉と有村架純がダブル主演を務める映画「花束みたいな恋をした」(公開中)にも出演。世界三大映画祭の一つであるベルリン国際映画祭で賞を獲得した作品の出演者という箔がついたいま、さらなる飛躍が期待されるところだ。
(山本菜摘)