【ミステリと言う勿れ】風呂光刑事を無理やり絡めた力技が示す「恋愛推し」への執念!

 なるほど、そうやって絡ませていたのか。原作ファンからそんな声も聞こえてきそうだ。

 2月21日放送の月9ドラマ「ミステリと言う勿れ」(フジテレビ系)第7話では、前話から続いていた連続放火事件の犯人が判明。その意外すぎる展開に感心する視聴者が続出していた。

 前回の第6話では、放火事件は“炎の天使”こと井原香音人(早乙女太一)と、その子分的な存在の“ゲコ”こと下戸陸太(岡山天音)の二人による犯行であることが示唆されていた。二人は虐待に苦しむ子供に近づき、炎の天使が親を焼き殺してあげると誘っていたのだった。

 そのゲコは、放火現場を見に来ていた主人公の整(菅田将暉)の存在が気になることに。そして次に救うべき子供を病院で探している時に整とまた出会うことになり、自分の正体が知られたと怪しむゲコは整を深夜の倉庫に誘い出し、縛りあげていた虐待児童の両親と共に始末してしまおうと画策したのである。

 倉庫内で揉み合うゲコと整。すると偶然、整のスマホが鳴り、ゲコはスマホを奪って投げ捨てようとする。ここでゲコはスマホに結び付けられていた赤いオーナメントを目にしてしまい、<赤い物を見ると痛みを感じる>という持病を発症。整は窮地を脱することができたのだった。

「原作マンガだと、整に電話を掛けてきたのは池本刑事(尾上松也)でしたが、ドラマ版ではヒロインの風呂光聖子刑事(伊藤沙莉)が掛けていました。その後、ゲコとともに香音人の自宅に赴いた整は、身の安全を図るため密かに電話を掛けますが、その相手も原作では池本刑事だったのが、ドラマでは風呂光刑事に替わっていたのです。ドラマ版には原作にない“恋愛要素”が付け加えられており、風呂光刑事が整に対して淡い恋心を抱くことに。そこでドラマ版の制作陣は整との電話相手を、男性の池本刑事からヒロインの風呂光に替えるという力技を見せてきた形です」(テレビ誌ライター)

赤いオーナメントに命を助けられる形になった主人公の整(菅田将暉)。ドラマ「ミステリと言う勿れ」公式ツイッター(@not_mystery_)より。

 原作マンガのファンからは大きく批判されている「恋愛要素」だが、ドラマ版ではどうやら風呂光刑事の淡い恋が重要なテーマに設定されているようだ。ただ、電話相手を原作マンガの設定から変えるには、それなりの理由が必要。原作ではもともと池本刑事が整の推理力を信頼しており、何かにつけて整に連絡するという枠組みが示されている。それではドラマ版ではどうやって、風呂光刑事が電話を掛ける流れになっていたのだろうか。

 整は謎の女性・ライカ(門脇麦)からクリスマスプレゼントの交換を提案され、ライカから赤いオーナメントをもらうことに。ライカの提案でスマホに結び付けていたが、結果的にそのオーナメントが整の命を救うこととなっていた。

「この枠組みは原作でもドラマ版でも変わりないのですが、ドラマ版では風呂光刑事が、赤いオーナメントを買おうとしているライカを偶然目撃しています。これは原作には存在しないシーンです。しかも原作マンガではライカと整の関係に風呂光刑事が何ら絡んでいないのに対して、ドラマ版では二人が深夜に会っている現場を風呂光刑事が目撃。ライカに対してほのかな嫉妬心を抱く様子が描かれていました」(前出・テレビ誌ライター)

謎の女性・ライカ(門脇麦)。原作マンガではこの後も登場するが、ドラマ版では果たして!?  ドラマ「ミステリと言う勿れ」公式ツイッター(@not_mystery_)より。

 ドラマ版では風呂光刑事が12月23日に、整へのクリスマスプレゼントとしてマフラーを購入。ところが翌日のクリスマスイブ、赤いオーナメントを買うライカを目撃した彼女は、それが整へのプレゼントではないかと怪しんでいた。この辺りはすべてドラマ版だけのオリジナルシーンだ。

 その後、風呂光刑事が整に電話するも、着信履歴だけが残ることに。その履歴を見た整はコールバックしたが、今度は風呂光刑事が電話をとれないというすれ違いになっていた。ここでドラマ版の制作陣が力技を発動したというのである。

「風呂光刑事が電話をとれなかったのは、警察車両の中に自分のスマホを落としていたから。しかし連絡手段の確保を重視する刑事がむやみにスマホを落とすとは考えづらく、制作陣は無理やりこの場面を挿入していたのです。そのおかげで、整が倉庫内で危機一髪の状況になった時、スマホを見つけた風呂光刑事からの電話により命を救われるという演出が可能になりました。しかもこの演出では風呂光刑事が抱く整への恋心も描くことができ、ドラマ制作陣にとっては一石二鳥の“改変”となっていたのです」(前出・テレビ誌ライター)

 なお原作マンガでは、倉庫内で揉み合っている整のところに池本刑事が電話を掛けてきたのは、単なる偶然のタイミングとなっている。マンガだとあまりに気にならない場面だが、時系列を重視するドラマ版ではそのタイミングで電話がくる必然性が求められることに。原作をじっくり読み込んでいるであろうドラマの制作陣は、この場面に<これで風呂光刑事と絡められる!>との勝機を見いだしていたのかもしれない。