視聴者にとっても予想外の大出世を果たしていたようだ。
3月3日放送のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第86話では、時代設定が昭和59年(1984年)から平成4年(1992年)へと8年もジャンプ。戦前から始まった物語がついに平成へと突入した。
作中では当時のヒット曲である米米CLUBの「君がいるだけで」がラジオから流れてくる場面も。本ドラマの音楽を担当する金子隆博氏はその米米CLUBでサックスを担当していた経歴を持ち、ドラマと現実が巧みにシンクロしていた形だ。
そして作中では8年の間に、主演女優の座にまで上り詰めた女優がいたのである。
「ヒロインの大月ひなた(川栄李奈)は勤務先である条映京都撮影所(太秦映画村)の休憩室にて、交際相手で大部屋俳優の五十嵐文四郎(本郷奏多)と会話していました。壁には『茶道家 水無月ぼたんの事件簿』というドラマのポスターが張られており、その主演女優こそ、8年前にひなたがお世話をしていた美咲すみれ(安達祐実)だったのです。鳴かず飛ばずだった美咲は当時、ひなたの上司である榊原の肝いりで、太秦映画村のステージ『京都茶道家殺人事件』に出演。主役ではなく序盤で殺される茶道家の役でしたが、それがきっかけで主演女優へとステップアップできていたようです」(テレビ誌ライター)
ステージ出演に際しては、ひなたの親友で茶道家の娘である一恵(三浦透子)から厳しい稽古を受けていた美咲。年下からの叱責に「やってらんない!」と稽古を投げだす場面もあったものの、どうやら茶道家の役をしっかりと身に着け、それが花咲いたようだ。
その茶道家がハマり役となり、ドラマ主演まで上り詰めた美咲。作中では、8年経っても大部屋俳優のままで伸び悩んでいる文四郎との対比となっていたが、その一方で美咲の主演ドラマに<まさかこんなオマージュがあるとは!>と驚く視聴者もいたという。
「ドラマ『茶道家 水無月ぼたんの事件簿』は木曜日にテレビ日出で放送されているとのこと。ここで視聴者が思い描いたのは、沢口靖子主演の人気シリーズ『科捜研の女』(テレビ朝日系)です。この両作品は放送日が同じで、テレビ局も同じような名前。いずれも京都を舞台としており、制作しているのが映画会社という点まで一緒ですからね。そうなると美咲は沢口のような大女優に成長していたことになります。ちなみに『科捜研の女』シリーズは沢口が34歳の時に始まっており、作中の美咲もちょうどそれくらいの年齢ですから、美咲の主演ドラマはまさに『科捜研の女』のオマージュと考えて間違いないでしょう」(前出・テレビ誌ライター)
そんな「科捜研の女」はテレビ朝日と東映の共同制作。昨年9月に映画版が公開された際には東映太秦映画村に「科捜研の女 ミステリーショップ」がオープンするなど、東映にとっても大事な作品となっている。
一方で「カムカムエヴリバディ」の舞台である条映では、時代劇の人気がすっかり陰りを見せ、映画村の入場者も減っている現状が描かれていた。その救世主が美咲の「茶道家 水無月ぼたんの事件簿」になるのか。時代劇にこだわる文四郎は同ドラマへのエキストラ出演を断っていたが、いずれは現代劇で活躍する場面が観られるのかもしれない。