50年前の伏線も、つい先日の伏線も、まとめて回収に入ったようだ。
3月17日放送のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第96話では、大月るい(深津絵里)が岡山を出た時の思い出が語られる場面があった。
るいは父親の稔を戦争で失くし、6歳の時には母親の安子(上白石萌音)が進駐軍将校と一緒にアメリカに渡っていた。その後は父方の実家である岡山の雉真家で育ち、高校を中退した17歳で単身、大阪に出ていた。
それから32年が経った平成6年(1994年)の夏、安子の兄でるいにとっては叔父にあたる橘算太の最期を看取ったことをきっかけに、るいは家族を伴って雉真家に里帰り。父・稔の弟で、るいの叔父にあたる叔父の勇(目黒祐樹)は、大月家を出迎えてたいそう嬉しそうな様子だ。
「夕食の席で勇は突然、涙を見せることに。それはるいが岡山に戻ってきたことへの喜びの涙でした。ここで勇は、るいが岡山を出る日に交わした会話を思い出すことに。その回想シーンにて、昨日放送の第95話で視聴者が抱いた疑問が解消されていたのです」(テレビ誌ライター)
昭和37年に勇は、るいと最後のキャッチボールをしながら、「住むとこが決まったら、知らせられよ?」と伝えていた。「うん」と答えたるいだったが、その時に勇は「るいが居場所知らせる気も、手紙やら電話やら寄越す気もねぇいうことを。もう二度と岡山に帰ってくる気がねぇいうこと」を感じていたと明かしたのだった。
さらに続けて「それがこげえして元気な姿見せてくれて」とるいとの再会を喜び、「旦那さんやら娘やら息子やら連れて来てくれた。こない嬉しいことはねえ」と言いながらむせび泣き。両親のいなかったるいが家族を伴って帰省したことに、勇は叔父として感動していたのだった。
「前回の放送では、勇がるいの行方を知らなかったことについて一部の視聴者から疑問の声もあがっていました。るいが雉真家に大阪での居場所を教えていないであろうことは想像がつくものの、叔父の勇は岡山でも有数の大企業である雉真繊維の社長。その気になれば興信所などを使って、実の姪であるるいを探し出すこともできたはずです。しかし勇は、るいが自らの意思で岡山を棄てたことを理解していました。だからこそあえて、自分からるいを探しにいくようなことをしなかったことが今回、示されたのです」(前出・テレビ誌ライター)
このように前回の疑問が解消された岡山帰省は、同じ岡山の出身で戦災孤児だった夫の錠一郎(オダギリジョー)にとっても、自身を育ててくれたジャズ喫茶経営者の柳沢定一(世良公則)のその後を知る旅となっていた。しかも定一の息子である健一からは、50年以上前に安子と稔が初デートした様子を聞くことさえもできたのである。
「物語の終盤を迎えた『カムカムエヴリバディ』では怒涛の伏線回収が始まると期待されています。その期待通りにるいや安子の過去が振り返られたばかりか、前日の放送で視聴者が抱いた疑問までまとめて回収。50年の時を自在に行き来する展開には感心するばかりです」(前出・テレビ誌ライター)
岡山時代のるいが使っていた部屋では、机の引き出しから父・稔の日記を見つけることに。次回以降はるいが、稔と安子の馴れ初めを知ることになるはず。るいが家族を再生し、取り戻す旅は、まだ始まったばかりのようだ。