作品に深みを与えるのは演者や脚本家だけの仕事ではないようだ。
放送中のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」では、3月18日の放送終了後に次週分の予告動画を公式ツイッターにて公開。25秒という短いものだが、これまでの展開を覆すような意外な場面が描かれていたという。
「動画の冒頭はスーツケースを引く大月るい(深津絵里)が出かける場面となっており、娘のひなた(川栄李奈)が『広いからなあ、アメリカは』とつぶやく姿も。これは同日に放送された第97話にて、るいが『アメリカに行きたい』と言っていた場面からの流れでしょう。またひなたが外国人に英語で話しかける場面もあり、これも第97話で母親や祖母の安子(上白石萌音)が使っていた英語教材を見つけたエピソードの延長線にあることは間違いありません」(テレビ誌ライター)
その一方でるいの夫である錠一郎(オダギリジョー)が「また音楽活動再開するよ」と切り出す場面もあった。だが第97話にはそれを予感させる場面はなかったうえ、錠一郎はトランペットを吹くことができない病気が治らないままのはずだが…。
「そのヒントは3月15日に放送された第94話にありました。この回では死期の迫った算太(濱田岳)がるいの元に身を寄せ、クリスマスの福引を手伝います。そこで妹の安子が子供だったころの幻想を見た算太は、路上でダンスを披露することに。すると錠一郎は福引の景品であるおもちゃのピアノを取り出し、算太のダンスに合わせて曲を演奏し出したのです」(前出・テレビ誌ライター)
錠一郎が奏でたのは、本作のサウンドトラックに収録されている「ニューオーリンズの空へ」。るいの名前の由来となったルイ・アームストロングがジャズメンとして活躍した街にあやかった曲だ。
その演奏を目を丸くして見つめていたひなた。そして温かな目線で見守っていたるい。吹けなくなったトランぺッターの錠一郎がなぜピアノを弾くことができたのか。そこにはこんな“実話”が隠されていたのである。
「錠一郎が患ったのは『職業性ジストニア』という病気で、本作の音楽を担当する元・米米CLUBの金子隆博氏も2005年に発症。結局サックスは吹けないままとなり、2012年には症状を告白していました。その金子氏は作曲家やプロデューサーとして音楽に関わり続けるため、ピアノを猛練習。まったく異なる楽器なら演奏できることを自ら実証した形です。それゆえ錠一郎もトランペットは諦めたものの、ピアノなどの鍵盤楽器なら弾ける様子。もしかしたら第94話の時点で彼自身、そのことに気がついたのかもしれません」(前出・テレビ誌ライター)
予告動画では、かつて錠一郎のライバルだったトミー北沢が大月家を訪ねてくる場面も映っていた。プロとして活躍しアメリカでも活動したことのあるトミー。もしかしたら錠一郎は、トミーのバンドに関わっていくのかもしれない。