【ちむどんどん】恋のゲバルトに及び腰の博夫をふった良子の革命的決断に「異議なし!」

 50年前もやはり、口ばかりの男というのは嫌われていたようだ。

 5月20日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第30回では、比嘉家の長女・良子(川口春奈)が、縁談話に迷っている様子が描かれた。

 前々回の放送で、製糖工場の跡取り息子である喜納金吾(渡辺大知)から正式に縁談を持ち込まれた良子。金吾と結婚すれば比嘉家にのしかかる借金問題が解決するのは明らかだが、良子は大学時代からの勉強会仲間である石川博夫(山田裕貴)に想いを寄せていた。そこでハンバーガーショップに博夫を呼び出し、今回の縁談についての考えを問いただしたのである。

 縁談について「聞きたいんです。博夫さんがどう思うか」と訊ねた良子だが、博夫は「君は俺の家族でも所有物でもない」との原則論を口にし、責任が持てないうえに意見を言う権利もないと返答。そんな話は聞きたくないという良子に、「俺の意見は…関係ある?」と言い放つ始末だ。これが良子に想いを寄せているはずの男子が取るべき態度だろうか?

 そんな姿に視聴者がイライラを募らせるなか、「俺が『するな』と言えば結婚しないのであれば」と切り出した博夫。ついに自分を選んでほしいと求愛するのかと期待が高まったものの、結局は「それは…君の近代的自我にコントラディクションして、その…僕のエゴの構造的に」と、学生運動用語を交えながらはっきりしない態度に終始していたのであった。

一度は良子に「俺と、けっ…」まで言いかけていた博夫。この機会を逃したのがすべてだったのかもしれない。トップ画像ともに©NHK

「勉強会で良子らと議論を交わすのが好きな博夫は、当時すでに沈静化しつつあった学生運動の影響を少し遅れて受けていたのかもしれません。それに加えて祖父と父も教員という教員一家に育った彼は、恋愛に対して奥手だったのでは。そんな煮え切らない博夫に対して、良子が見切りをつけたのも無理はないでしょう」(当時の世相を知るベテランライター)

 ため息をつきながら、結論を出そうとしない博夫に「弱いわけさぁ、結局。だからすぐ誰かに意見求める」と自らを奮い立たせるように口走った良子。打算的な結婚が善か悪かの結論はとっくに出ているとしつつ、「人生には打算的にならなきゃならない場面もある」との決断を明かしていた。

 その矛盾を良子一人では乗り越えられない時に「誰かに背中を押してもらいたいと願ってる」という思いが、博夫には通じなかった。彼女は「さようなら」との言葉を残して、店を後にしたのだった。

「博夫は結局、良子というメッチェンにリーベンしているにも関わらず、熱いオルグで良子に迫る金吾とのレゾンデートルを賭けたゲバルトに負けてしまったのです。口ばかりで良子への告白にヒヨっていた博夫はナンセンス!であり、自らを総括すべき。そんな博夫を選ばなかった良子の革命的な決断には『異議なし!』ではないでしょうか」(前出・ベテランライター)

 どうやら言葉を弄するばかりの博夫は、「ラブ&ピース!」の精神で言葉と行動が一致している金吾に勝つことはできなかったようだ。