もう“善き両親”との幻想は捨てたほうがいいのでは? そう感じた視聴者も少なくなかったことだろう。
5月26日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第34回では、比嘉家の長女・良子(川口春奈)が縁談の話を断って、小学校教員の石川博夫(山田裕貴)と「結婚します」と宣言する場面が描かれた。
以前から製糖工場の跡取り息子である喜納金吾(渡辺大知)から猛烈な求愛を受けていた良子。この日はついに、比嘉家と喜納家の両家による顔合わせが行われていた。
そこに割って入ったのが、かねてから良子が思いを寄せていた先輩の博夫。一度は良子の縁談を祝福したものの自分の気持ちに正直になり、「良子さんをください!」と直談判に来たのであった。
しかし長男の賢秀(竜星涼)は、金吾の父親に<元カレに渡す手切れ金>として10万円を用意させていたこともあり、博夫を阻止。「こちらの喜納さんは製糖工場の大金持ち! お前とは月とスッポン。お前とは住む世界が全然違う」とまくしたてたのである。
「多くの視聴者が『そういうことじゃないだろ…』と呆れるなか、賢秀は博夫に対して『分かったらさっさと帰れ、貧乏人!』との暴言を吐いたのでした。博夫は三代続く教員の家庭に育っており、賢秀の言葉は明らかに的外れなのですが、そもそも人をののしる際に『貧乏人』という言葉を使うこと自体があまりにも常識外れでみっともないこと。ネット掲示板のスパム投稿並みに口汚い賢秀に、視聴者も呆れかえっていたことでしょう」(テレビ誌ライター)
子供のころから口が悪かった賢秀。前回の第33回では、妹の良子に向かってあり得ないレベルの暴言を吐くシーンも映し出されていた。それは二人がまだ中学生だった時の思い出だ。
勉強は得意なものの家事はからっきしな良子。その時はご飯を炊いたものの、真っ黒に焦がしてしまっていた。すると賢秀は「いくら勉強ができてもご飯も炊けない女は一生結婚できないよ」と言い放っていたのであった。
「すっかり落ち込んでしまった中学生当時の良子に、当時まだ存命だった父親の賢三(大森南朋)は『良子はいつか大好きな人と結婚して、必ず幸せなお嫁さんになれる』と言って慰めていました。しかし賢三や母親の優子(仲間由紀恵)が賢秀をたしなめた様子はありません。そもそも賢秀がそんな言葉を使ったのは、彼の中に女性を蔑視する旧弊がこびりついているからでしょう。本来なら賢三こそが父親として、そんな賢秀の性根を叩き直すべき。とにかく比嘉家の両親はあまりにも賢秀を甘やかせすぎで、視聴者からは《親の顔を見てみたい(もう見ているけど)》とあきらめの声があがる始末です」(前出・テレビ誌ライター)
作中では基本的に「善い人」として描かれている賢三だが、妻の優子と共に賢秀を徹底的に甘やかし、平気で詐欺を働くような人間に育ててしまった責任があるのではないか。そんな過ちを自認しているからこそ、優子は賢秀が何をしでかしても怒ることができないのかもしれない。