まだ折り返し地点にも届いていないのに、その秘密を明かす必要があったのだろうか?
6月7日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第42回では、ヒロインの比嘉暢子(黒島結菜)とイタリア料理店「アッラ・フォンターナ」の大城房子オーナー(原田美枝子)が、血縁関係にあることが明かされた。
大城オーナーは、暢子の亡き父親・賢三(大森南朋)から見た叔母。すなわち暢子にとっての大叔母だった。しかも約10年前に賢三が亡くなった時、4きょうだいの一人を引き取ってもいいとの手紙を寄越していたのが、当の大城オーナーだったことも判明したのである。
それが分かったのは、暢子が沖縄の実家に画報誌の「東洋グラフ」を送ったから。同誌にはフォンターナの取材記事が掲載されており、集合写真に暢子も写っていることから、料理人として銀座で働いている自分の姿を家族に見せたかったのだろう。
すると母親の優子(仲間由紀恵)が“大城房子”の名前に反応。すぐ暢子に電話をかけ、「ウチたちの親戚であるわけよ。父ちゃんの叔母さん」と明かしたのである。
「大城オーナーが5月17日放送の第27回に初登場した時から、視聴者のあいだでは《暢子を引き取ろうとしていた東京の叔母では?》との考察が広まっていたもの。5月23日放送の第31回では、賢三の名前が彫られた包丁を見たオーナーが『ちょっと因縁があるのよ』とつぶやく場面もありました。そのため血縁関係が判明したことに意外性はなく、むしろ視聴者の疑問を生むこととなったのです」(テレビ誌ライター)
その疑問とは、なぜこのタイミングで血縁関係が判明する流れになったのかということだ。大城オーナーは最初に登場した時から「どこの出身とか誰の紹介とか一切関係なし」との態度を貫いており、暢子がオーナーとの血縁に気づいた今回も「どこの出身とか誰の親戚とか一切関係ない」と断言していた。
とは言え、本当に「一切関係ない」のであれば、物語に血縁関係を持ち込む必要すらないはず。そもそも大城オーナーが暢子に新聞社のボーヤ(雑用係)をやらせたり、屋台の立て直しを命じたことからして、親戚の暢子を特別扱いしていることは明らかだ。
「そこで問題となるのが、なぜこんなにあっさりと血縁関係をバラしてしまったのかです。前作の『カムカムエヴリバディ』では、祖母の雉真安子がアニー・ヒラカワと名前を変えて日本に舞い戻っていましたが、大月るいの母であり大月ひなたの祖母であることが判明したのは、最終回のわずか4回前のこと。そこまで引っ張るだけ引っ張って、最後にようやく種明かしをした形です。そのパターンにならえば、『ちむどんどん』でも暢子と大城オーナーの血縁関係を明かすのは、最終回近くでもよかったのではという声があがるのも無理はありません」(前出・テレビ誌ライター)
もっとも、安子・るい・ひなたの母娘関係が物語の主軸を貫く「カムカムエヴリバディ」と、比嘉家の4きょうだいを巡る物語である「ちむどんどん」では、血縁関係の描き方も変わってくるとの見方もあるだろう。
そしてもう一つ、大城オーナーと暢子の血縁関係が今回判明したことは、決して早すぎるわけではないとの指摘もあるようだ。それは数字の上で明らかだというのである。
「あらためて『カムカムエヴリバディ』を振り返ると、アニー(安子)が物語に初登場したのは3月24日放送の第101回でした。そしてアニーがるいの母親だと判明したのは第109回のこと。視聴者としてはアニーの正体を探る考察が数カ月にもわたって続いていたイメージですが、実はたったの2週間で血縁関係が明かされていたのです」(前出・テレビ誌ライター)
そうなると「ちむどんどん」でも二人の血縁関係を最終回近くまで引っ張る必要はないのも納得だろう。果たして大城オーナーは暢子に対して今後、どんな対応を見せるのか。ここからの展開を楽しみにしたいものだ。