この調子では残りの放送が相当駆け足になるのでは? そう心配している視聴者も少なくないことだろう。
8月15~19日に放送されたNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」の第19週では、沖縄出身のヒロイン青柳暢子(黒島結菜)がいよいよ、沖縄料理店を開店して独立するまでの様子が描かれた。
地元の山原高校を卒業し、沖縄が本土に復帰した昭和47年(1972年)に上京した暢子。縁に恵まれた彼女は東京・銀座のイタリア料理店「アッラ・フォンターナ」に採用され、7年間にわたってイタリアンのシェフとして腕を磨いてきた。
オーナーの大城房子(原田美枝子)は暢子の大叔母にあたり、厳しい態度で接しながらも暢子の成長をサポート。小学生の時に沖縄で出会った青柳和彦(宮沢氷魚)とも再会することができ、昭和53年の夏にはついに結婚を約束することに。翌年3月にはフォンターナで披露宴を行い、比嘉から青柳へと姓が変わった暢子は、自分の店を持つことになったのだった。
「95回まで終わった本作ですが、その配分は暢子の小学生時代が全10回で、高校生時代が全15回。そして上京してから結婚するまでの『イタリアン修業時代』は第26回から第90回までの実に65回にも及びました。本作は全125回なので、18歳からの7年間に物語全体の半分以上を費やした計算になります」(テレビ誌ライター)
残るエピソードは全6週、30回のみ。その30回で26歳以降の人生が描かれるわけだが、そのバランスに疑問を抱く視聴者も少なくないという。
そもそも本作は公式サイトの紹介文によると「個性豊かな沖縄四兄妹の、本土復帰からの歩みを描く笑って泣ける朗らかな、50年の物語」となっている。実際には本土復帰の8年前にあたる昭和39年から物語がスタートしているが、そのゴールは2022年で変わらないはずなので、あと43年分を描く必要がある計算だ。
第95回終了時点で、全体の76%まで到達した本作。レースで言えば第4コーナーを回るところで、もはやラストスパートに入ろうという段階だ。ところがヒロインの暢子はまだ20代半ばで、やっと結婚したばかり。今年で69歳を迎える彼女はまだ、人生の3分の1を過ぎた時点に過ぎないのである。
「本作では物語の進行が異様に遅く、その遅さは前作の『カムカムエヴリバディ』と比較するとさらに際立つことに。前作は母娘3代の100年を描く物語でしたが、その配分は安子編が38回、るい編が25回、そしてひなた編が49回でした。第95回時点では時代が平成6年(1994年)に進んでおり、3代目ヒロインの大月ひなた(川栄李奈)も29歳に成長。第62回で生まれたひなたがたった33回で暢子の年齢を追い抜いていたのです」(前出・テレビ誌ライター)
これから沖縄料理店のオーナーとして苦難の道を歩いていくであろう暢子。その半生を描くには、ここをスタートに朝ドラを丸ごと一作ぶん費やしてもいいほどだ。しかも比嘉4きょうだいでは長男の賢秀(竜星涼)と3女の歌子(上白石萌歌)が未婚で、これから二人の恋バナも展開されることだろう。
そもそも本作の制作陣は、最初に最終回の内容を決め、そこから逆算して物語を構築していったと説明していた。それなら今後放送される30回分は、物語構築の序盤に当たるはずだ。よもやその序盤でにおいて40年超もの歳月を早足で駆け抜けてしまったのだろうか。
「これが『課長島耕作』シリーズだったら、若手時代を描いた『ヤング島耕作』だけで全体の半分以上を費やした計算となり、バランスの悪さは一目瞭然です。ともあれ『ちむどんどん』は今のペースだと、せいぜい昭和が終わるくらいのタイミングで物語がフィニッシュしないと無理があります。それとも平成以降のエピソードは、驚くほどの駆け足で描いてしまうつもりなのでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)
そもそも和彦の母・重子(鈴木保奈美)に結婚を認めてもらうエピソードだけで第76回~第89回の14回も費やす必要があったのか。後から振り返ればあまりものバランスの悪さに驚くことは確実だろう。