上手く歌えないことが、逆に歌唱力の高さを表すこともあるようだ。
9月12日深夜放送の「新・乃木坂スター誕生!」(日本テレビ系)では、シティポップの旗手として知られる杉山清貴がゲスト出演。代表曲の「さよならのオーシャン」を乃木坂46の5期生、中西アルノとデュエットすることになった。
1986年リリースの同曲は、19歳の中西にとっては生まれる前のヒット曲。最近はシティポップが世界的な流行を見せているとは言え、中西は「あまり歌ったことがないジャンルの曲」と、その難しさを口にしていた。
「中西は本番前に、これまで番組で歌った曲の中で一番難しいと漏らしていた様子。杉山も『俺のキーだから大変だと思いますよ』と心配していました。そしていざ本番。歌唱力では5期生でもトップクラスの中西ですが、歌い出しから低音部にはかなり苦しんでいる様子がハッキリと伝わってきましたね」(音楽ライター)
Aメロの最後「僕のせい♪」という箇所では、最も音が低くなる「せい」のところで消えうるような発声に。サビでも、音が低くなる「いちどだけ♪」の箇所では普段ののびやかな歌声とは裏腹に、声が震えているように聞こえていたのである。
同番組では5期生メンバーに合わせて曲のキーを変えることもあり、7月11日深夜の放送回では中西が平井堅の「瞳を閉じて」を3度上げで歌っていたもの。しかし今回は杉山とのデュエットだったことから、元のキーで歌うことを余儀なくされていた。
中西の魅力はハイトーンをのびやかに歌い上げる歌唱力にあり、今回はその実力を存分には発揮できなかった形だ。歌唱後にはMCのオズワルド畠中が「あの低い声が出るってのスゴいですよね。あれだけハッキリ歌えてるっていうのが」と持ち上げていたものの、中西自身は自分の歌唱に納得がいってなかったことだろう。
だが、そういった満足のいかない歌にこそ、彼女の実力が存分に発揮されていたというのである。
「歌いやすいキーでのびのびと歌うのが一番キレイなのは当然ですが、歌いづらいキーをどうやってしのぐかという今回のようなチャレンジには、歌唱力のベースが表れるもの。この日の中西は低音部に苦しみつつも、それをさほど感じさせないようにカバーするテクニックを見せてくれました。番組スタッフも彼女の歌を聴いたうえで、放送に乗せられるレベルだと判断したのでしょう」(前出・音楽ライター)
あえて難しい楽曲を歌わせるところは、この番組がメンバーの育成にもつながっていることを示していたのかもしれない。