【ちむどんどん】賢秀の養豚場勤務がバレていない不自然さは「過去の脚本を無視」の力技だった!

 さすがにその設定には無理があるのでは…。視聴者も疑問に思っているはずだ。

 9月13日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第112回では、ヒロイン青柳暢子(黒島結菜)の兄・比嘉賢秀(竜星涼)が、猪野清恵(佐津川愛美)を探し続ける姿が描かれた。そのなかで、賢秀の仕事を巡って不自然な描写があったという。

 賢秀は清恵の実家である千葉の猪野養豚場で働いており、真面目でちゅらかーぎー(美人)な清恵に惹かれていた。だが結婚歴や水商売歴を隠していたことに憤り、清恵を責め立てることに。傷心の清恵は家を出て、水商売に舞い戻っていたのである。

 リリィの源氏名でスナック「ヒットパレード」に勤める清恵。そこは偶然にも暢子の沖縄料理店「ちむどんどん」の近所で、ひょんなことから猪野養豚場で育てた良質の皮付き豚肉を分けてもらった暢子は、清恵の行方を捜していた。そして賢秀も清恵を想う熱い心を胸に秘め、彼女を捜し求めることに。

 そのさなか、「ちむどんどん」では3カ月遅れの誕生会で賢秀を祝っていた。そこで交わされた会話にどうにも不自然な箇所があったというのである。

「暢子は清恵について『ニーニーがいま食べている豚肉も置いてってくれたわけさ』と説明。賢秀が『豚肉!?』と驚くと、幼馴染で食品卸業の砂川智(前田公輝)が『こないだから「豚」という言葉に異常に反応しているさ』との疑問を呈しました。この時点で暢子らは清恵の実家が養豚場であることを知らず、さらにはそこで賢秀が働いていることも知らないという体。しかしその設定にはあまりにも無理があるというのです」(テレビ誌ライター)

清恵を探す賢秀を応援する暢子。この期に及んでも賢秀の仕事について訊ねないという謎の兄妹関係だ。トップ画像ともに©NHK

 清恵の実家について知らないのは当然のことだが、賢秀が養豚場で働いていることをまったく知らないというのは、おかしな話だ。というのも本作ではこれまで何度も、賢秀と豚の関係を匂わせていたのである。

 7月26日放送の第77回では、暢子が婚約者の和彦(宮沢氷魚)とともに実家を訪問。しかし二人の結婚を認めない母親の重子(鈴木保奈美)は、比嘉家の家族構成を調べ上げ、家の格が合わないと主張していた。

 その際、重子は賢秀について「お兄さんは千葉の牧場で牛飼いの仕事」と告げ、「牛飼い?」と聞き返す暢子に「あら、ご存知でなかった?」と言い放っていた。この時点で暢子は、兄が「千葉の牧場」で働いていることを知ることになったはずだ。

 さらに8月9日放送の第87回では、暢子の姉・石川良子(川口春奈)が賢秀と共に重子のもとを訪れ、暢子と和彦の結婚を認めてくれるように懇願。ここで重子から「牛飼いのお兄さんもお引き取りください」と突き放された賢秀は「牛じゃない! 牛じゃなくて豚やさ!」と、自分が豚に関する仕事をしていると認めていたのである。

「良子と暢子の姉妹は仲が良く、電話でしょっちゅういろんなことを相談しています。それゆえこれらの会話についてもお互いに報告するはずで、少なくても『賢秀は千葉の牧場で豚の世話をしている』という共通認識は抱いていることでしょう。それに幼馴染の智は暢子の店に食材を卸していますから、普段から賢秀のことも話題にのぼるはず。それなのに今回、『豚という言葉に異常に反応している』という疑問が出てくるのは、もはや設定無視と言わざるを得ない無理筋の展開ではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)

 この「ちむどんどん」を巡ってはイタリア料理への無理解や東京の地理を無視した描写など、あまりにも粗すぎる雑な点が目立っている。とは言えそのへんは「ドラマだから」という言い訳で切り抜けられるのかもしれない。

 しかし今回の「豚」を巡る会話では、過去の放送で交わされた会話にさえ反する無理筋すぎる力技が露呈。呆れるほどの自己矛盾には、視聴者も「自分で書いた脚本すら無視するのはやめてほしい」と言いたいところではないだろうか。