【ちむどんどん】暢子の店はやはり高円寺にあり?決め手となったポイントとは!

 やっぱり高円寺だったのか! そう実感した視聴者も少なくなかったようだ。

 9月14日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第113回では、猪野養豚場に勤める比嘉賢秀(竜星涼)が、養豚場の一人娘である清恵(佐津川愛美)と結ばれる場面が描かれた。その陰では物語の舞台がどこにあるのか、視聴者の考察が進んでいたという。

 故郷の沖縄から料理人を目指して上京したヒロインの青柳暢子(旧姓:比嘉、演:黒島結菜)は、7年間勤務していた銀座のイタリア料理店「アッラ・フォンターナ」から独立。東京・杉並に沖縄料理店の「ちむどんどん」を昭和54年(1979年)に開業していた。

 それまで銀座に勤め、横浜・鶴見の“リトル・オキナワ”に下宿していた暢子が突如、杉並を創業の地に選んだことには多くの視聴者がビックリ。一方で杉並区は昭和54年の時点で約53万人の人口を抱えており、県庁所在地並みの大都市ゆえ、杉並のどこに暢子が店を構えたのか気になる視聴者も多かったのである。

「ドラマゆえに具体的な場所は示されないものの、制作陣がモデルにした街はあるはず。杉並編の当初から有力候補として挙げられていたのが、サブカルの街として全国に知られる高円寺でした。同地では昭和53年に石垣島出身者が抱瓶(だちびん)という居酒屋を開業し、東京で最も初期にオープンした沖縄料理店として知られています。街の規模も大きく、料理店を開業するには絶好の場所でしょう」(杉並区在住ライター)

 その高円寺説をさらに補強したのが、清恵の存在だ。実家を飛び出した彼女はリリィという源氏名で、スナック「ヒットパレード」に住み込みで勤務。同店は「ちむどんどん」から徒歩圏内にあり、この街には飲食店とスナック街が同居していることが示されていた。これも高円寺らしさの表れだろう。

 それに加えて、脚本を担当する羽原大介氏が日大芸術学部の出身であることも、高円寺説を強める材料に。日芸は隣の練馬区に所在するものの、最寄り駅の江古田はバス1本で高円寺と行き来することが可能。日芸の学生にとって高円寺は行動範囲のひとつであり、羽原氏にとっても描写しやすいはずだ。

杉並・高円寺駅ガード下の飲食店街。いかにもリリィが勤めていそうな雰囲気が漂っている。

 ただ、これまでの作中では「高円寺に違いない!」と断言できるほどの証拠が示されていなかったのも否めないところ。もちろん制作側としても、露骨な地域描写は避けたいのだろう。

 だが今回の第113回ではついに「やっぱり高円寺だったのか!」と確信できる描写があったというのである。杉並区在住ライターが続ける。

「それは賢秀がヒットパレードの店先で清恵を口説いたシーンでした。この場面で、電車が高架を走っていく効果音がハッキリと聞きとれたのです。清恵が勤めるスナック街には鉄骨が目立ち、いかにも高架下っぽい描写ではありましたが、鉄骨造りの長屋にも見えなくはありませんでした。それが今回、そばに高架が走っていることが明確に示されたことで、高円寺だと確信できたのです」

 この説明には少々、補足が必要だろう。杉並区内には18の駅があり、北から西武新宿線、JR中央線、東京メトロ丸の内線(支線含む)、京王井の頭線、そして京王線と並んでいる。そのなかで高架駅、もしくはホームの一部が高架になっている駅は5つしかなく、他はすべて地上駅(地下鉄含む)だ。

 高架がある駅のうち、京王井の頭線の高井戸駅と京王線の八幡山駅には京王クラウン街(現・京王リトナード)という高架下の商業施設があったが、いずれも京王電鉄の直営なことからスナックの類は入居していなかった。

 JR中央線だと阿佐ケ谷駅と西荻窪駅の高架下には飲み屋が少ない。高架からすぐの場所に何軒かスナックはあるものの、「ちむどんどん」の世界観とは雰囲気が違っており、リリィのような女性従業員が働いているイメージではないのだ。

「それに対して高円寺駅には唯一、高架下に飲み屋街が形成されています。また女性が接客するタイプの店も昔から存在しており、水商売の女性が歩いている姿も見られたもの。それに加えて商店街には今でも地元民に人気の精肉店があるなど、『ちむどんどん』の世界観に合致するアイテムがすべてそろっているのです」(前出・杉並区在住ライター)

 ヒロインの暢子を演じる黒島もかつては日芸に通っており、高円寺が行動範囲に含まれていた可能性もある。昨年12月公開の出演映画「明け方の若者たち」には、明け方の高円寺駅前を走っていくシーンもあったものだ。もしかしたら黒島自身も、自分が高円寺で店を開いたと思いながら演じていたのかもしれない。