東西の垣根を超えたコラボが実現していたようだ。
10月6日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第4回では、町工場の街である東大阪から長崎・五島に引っ越したヒロインの岩倉舞(浅田芭路)が、地元の小学校に通い始める様子などが描かれた。その冒頭に、朝ドラファンが驚きの声をあげる場面があったという。
母親のめぐみ(永作博美)は身体の弱い舞を連れて、祖母・才津祥子(高畑淳子)の家に身を寄せることに。亡き夫が腕の良い漁師だった祥子の家には近所の人たちもよく訪れているようだ。
序盤では船大工の木戸豪(哀川翔)が、修理したトランジスターラジオを持参。亡夫の雄一が漁船で使っていた思い出の品で、祥子は「直ったんね!」と嬉しそうだ。彼女は今でもそのラジオを相棒として漁船に持ち込んでいるという。
そのラジオには筆記体で「Apollon」と書かれた銘板がはめ込まれており、どうやら「AR-64」という型番のようだ。そのラジオに朝ドラファンが驚き、大喜びしていたというのである。
「このラジオ、2017年上期の朝ドラ『ひよっこ』にて、ヒロインの谷田部みね子(有村架純)が勤めるラジオ製作会社の向島電機で組み立てていた製品なのです。『ひよっこ』の作中では残念ながら不況のあおりを受け、昭和40年暮れに向島電機が倒産。『舞いあがれ!』に出てきたラジオもそのころに生産されたものなのでしょう」(テレビ誌ライター)
NHKの朝ドラでは、過去の作品に出てきた小道具を使いまわすケースが珍しくない。前々作の「カムカムエヴリバディ」では2019年度後期の「スカーレット」に登場していた「B&K BEER」というビールが飲まれていたものだ。
ここで気になるのは「ひよっこ」と「舞いあがれ!」では制作局が違うということ。朝ドラは上期が東京放送局、下期が大阪放送局の担当となっていることから、東京制作の「ひよっこ」で作られていたラジオが、大阪制作の「舞いあがれ!」に登場したことに、驚きを隠せない視聴者もいたことだろう。
「東京と大阪で小道具を融通するケースはこれまでにもありました。最近だと前作の『ちむどんどん』に登場していたオート三輪と同じものと思われる個体が、前々作の『カムカムエヴリバディ』にも登場していたと指摘されています」(前出・テレビ誌ライター)
その「ちむどんどん」では砂川智(前田公輝)が横浜・鶴見で立ち上げた食品卸会社のスナガワフードにて、オート三輪を配達に使っていた。作中では少しだけだが実走している場面もあり、保存状態の良さが際立っていたものだ。そのオート三輪はおそらく昭和38年には生産が終了していた「くろがね号」だという。
それと同じくろがね号が「カムカムエヴリバディ」では、ヒロインの雉真安子(上白石萌音)が乗る自転車と衝突事故を起こす場面で使われていたようだ。このように東京と大阪で小道具を融通しあっていたのである。
「なぜ東京制作の『ひよっこ』からラジオを融通してもらったのか。もしかしたらそのラジオに、東大阪の町工場で作られた部品が使われているという筋書きの可能性もありそうです。母親のめぐみは駆け落ち同然で実家を飛び出し、東大阪でねじ工場を営む浩太(高橋克典)と結婚。そのため祖母の祥子とは折り合いが悪かったようですが、そんな母娘がラジオを介して繋がっていたというエピソードかもしれませんね」(前出・テレビ誌ライター)
5年前の作品で使われていた小道具を再登場させた「舞いあがれ!」。そのラジオが廃棄されることなくしっかりと保存されていたことにも感心するところだろう。