【舞いあがれ!】大阪人なら分かる?悠人が京大ではなく東大にこだわった理由とは

 父親に対するアンビバレンツな気持ちが、その選択に表れていたのかもしれない。

 10月21日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第15回では時代が2004年へと進み、ヒロインの岩倉舞(福原遥)は浪花大学に進学。子供のころからあこがれていた飛行機作りの夢をかなえるため、航空工学を学ぶことになった。

 一方で兄の悠人(横山裕)は小学生の時から目指していた東京大学に見事、現役で合格。大学4年を迎えて本来ならもう就職の内定が出ている時期ながら、何の連絡もないことに母親のめぐみ(永作博美)は心配を募らせていたのである。

 そんな悠人を巡って視聴者からは、大阪在住なのになぜ京大ではなく、子供のころから東大一本だったのかとの疑問が持ち上がっているという。

「関西での京大志向には相当根強いものがある一方で、東大離れは年々進んでいます。大阪随一の公立進学校である大阪府立北野高校では、1980年代までは毎年のように東大に二桁の合格者を輩出。それが1992年以降は一桁に落ち込み、2020年にようやく11名に復活したばかりです。岩倉家のある近鉄沿線からは府立高津高校への進学者が多いのですが、こちらもかつては毎年のように東大合格者がいたものの、2000年代以降は数年に一人に激減。公立高校では明らかに東大進学者が減っているのが現状となっています」(週刊誌記者)

 大阪の高校で東大合格者ランキングを作成すると、トップテンすべてが私立校となる。見方を変えれば、大阪で東大を目指したい子は私立校に通うべきということになり、悠人が小6時点で私立中の受験に没頭していたのも納得だ。

 父親の経営するねじ工場が苦境に陥り、私立校に通わせる学費も厳しそうという話になった時、悠人は強く反発していた。それは大阪の公立進学校を下に見ていたのではなく、東大を目指すなら私立校を選ぶべきという現実の反映だったのだろう。その思いは大学受験を経験した大阪人なら理解できるのではないだろうか。

妹の舞は地元の浪花大学に進学。おそらくは共学の公立高校に通っていたのだろう。トップ画像ともに©NHK

 そんな悠人はなぜ、かたくなに東大にこだわっていたのか。そのヒントは父親に対する態度に表れていたのかもしれないという。

「関西では京大と東大に差はないという受け止め方が根強く、優秀な子は京大に進むという考え方が一般的です。そんな状況で悠人が東大を選んだのは、大学進学を機に実家を出たかったからではないでしょうか。子供のころから父親が家業のねじ工場で苦労する姿を見てきた悠人は、工場という現場の仕事から距離的にも概念的にも遠いところに行きたかったのかもしれません。東大阪のような町工場の街にも京大を出たという人はけっこう多く、京大では町工場の呪縛から逃れられないという想いもありそうなもの。それは本編の終了後に放送された次週予告にも垣間見えていました」(前出・週刊誌記者)

 次週予告ではサングラス姿の悠人が「親父は地道にこつこつやってどんな夢かなえたん?」と啖呵を切る姿が。どうやら町工場を経営する父親の浩太(高橋克典)に対して含むところがある様子だ。そういった父親への反発が、東大に入って東大阪を出たいという気持ちに繋がったのかもしれない。

 そんな悠人に対して、妹でヒロインの舞は父親の仕事を尊敬している様子。浩太がかつて飛行機を作る会社に勤めていたことも彼女を刺激しており、父親から受け継いだ模型飛行機作りなどを通して、飛行機を作りたいとの気持ちをどんどんと高めていった。

 同じねじ工場の子供として育ちながら、親への気持ちは真反対とも言える悠人と舞。幸い、二人とも優秀な大学に進学したが、その相反する気持ちが今後の展開にどんな影響を及ぼすのか。視聴者としても気が気でならないことだろう。