【舞いあがれ!】貴司の辛さに想いを馳せる舞…その姿が示した「パイロットの適正」とは!

 その優しい心が、夢を実現するための大事な要素になるのかもしれない。

 11月15日放送のNHK連続テレビ小説「舞い上がれ!」第32回では、ヒロインの岩倉舞(福原遥)が行方不明になった幼馴染・梅津貴司(赤楚衛二)の身を案じる様子が描かれた。そこで舞が見せた苦悩に、今後の物語に影響するであろう要素が見え隠れしていたという。

 高校を卒業した幼馴染3人は、舞が浪花大学に進学し、望月久留美(山下美月)は看護師を目指して看護学校に入学していた。一方で貴司は両親から大学で文学を学ぶように勧められていたものの、自らの意思で就職。あまり人に関わらないで済むとの理由でシステムエンジニア(SE)の道を選んでいた。

 しかし実際のSEは、営業がメインの業務。もとより人付き合いの苦手な貴司は会社から与えられたノルマを達成することができず、しょっちゅう会社や先輩からの呼び出しを食らっていた。そして入社翌年の2005年3月、退職届を提出した貴司はそのまま、行方をくらましていたのである。

「貴司の両親から事情を聞いた舞は、3人が“秘密の隠れ家”的に使っていた古書店のデラシネに急行。しかし入口には『閉店 今までありがとうな 店主八木巌』と貼り紙されていました。そこで初めてデラシネの閉店を知った舞は『私、何も知らんかった…』と悔恨の表情でつぶやいたのです」(テレビ誌ライター)

 久留美とともに貴司を探し回るも、当の貴司は長崎・五島を訪れており、大阪中を探したところで見つかるはずもない。途方に暮れた二人はバイト先のカフェ・ノーサイドに戻り、舞は店内で3人で過ごしていた日々を思い出す。その場面に大きな意味があったというのである。

 舞は、3人で談笑しているときに貴司が呼び出された場面などを想起。「ちゃう。私、何も知らんかったんやない」とつぶやいた彼女は、「貴司君、なんか変やなって心の中で気ぃついてた」と、自分のことで頭がいっぱいだった自らのふるまいを振り返ったのであった。

クリスマスに3人が集まったときも、貴司は会社から呼び出しの電話を受けていた。トップ画像ともに©NHK

 いつも他人に気を遣う性格の舞。彼女自身も自分のそんな性格を自覚しつつ、行動に移せなかった自分を悔いていた。そんな姿に、彼女自身の未来を垣間見ることができたというのである。

 舞は旅客機のパイロットになるという夢を抱き、航空学校の受験を目指して勉強中。前日の第31回でその夢を打ち明けられた父親の浩太(高橋克典)は後日、母親のめぐみ(永作博美)に「大勢の命預かって飛ばなあかんねんから」と語っていたものだ。

「浩太の言う通り、パイロットとは大勢の乗員・乗客の命を預かって飛ぶ立場。その業務を遂行するには自分自身の強い責任感に加えて、他のパイロットや乗員、管制官や地上職員らを信頼する必要もあります。それゆえ独りよがりの性格では務まらず、舞のように常に他者を思いやる心が肝要。今回、貴司の苦悩に想いを巡らせた舞は、パイロット向きの性格だと言えるのではないでしょうか」(飛行機に詳しいトラベルライター)

 貴司からの電話に出たとき、「貴司くん…」とつぶやく舞の背後には、飛行機が発する「キーン」というエンジン音が聞こえていた。本作では時折、とくに飛行機が関係なさそうな場面にも飛行機のエンジン音が被さってくることがある。

 それは果たして本当に飛行機が発する音なのか、それとも舞の心の中に鳴り響いている音なのだろうか。様々な苦悩を経験しながら、舞の心はパイロットの夢へと舞いあがっているのかもしれない。