事情は分かるにしても、なんとかならなかったのかという声もあがっているようだ。
11月29日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第42回では、ヒロインの岩倉舞(福原遥)が念願の初フライトにたどり着いた。航空学校の学生として帯広でのフライト課程に進んでいた舞はこの日、ついに実機での操縦訓練をスタートしたのである。
だがその場面に、作中の2007年には存在していなかった飛行機が映っていたという。それはいったいどういうことなのか?
舞は同期の柏木学生(目黒蓮)および水島学生(佐野弘樹)との3人でチームを組み、大河内教官(吉川晃司)による指導のもと、初のフライトに臨むことに。まずは搭乗機の外観をしっかりと確認し、動翼も自分の手で動かしてチェックするといったプリフライトチェックを実施だ。
「3人が乗り込んだ飛行機には『JA01TC』という登録記号(レジ)が大きく書き込まれていました。この機体は実際に航空大学校で訓練機として使われている本物。米シーラス社製の『SR22』というモデルで、世界的なベストセラー機として知られています。操縦桿にはオーソドックスなハンドル型ではなく、コックピットの横から一本のスティックが伸びるサイドヨーク式を採用しているのが特徴です」(飛行機に詳しいトラベルライター)
ネット上では多くの飛行機好きが<シーラスSR22だ!>と反応。実際に航空大学校で使われていることから<撮影したことがある>との声もあがっていた。
舞たちが大河内教官とともに、出発前の打ち合わせであるブリーフィングを行っていた時には、机の上にSR22のキットモデルが置かれていたことに気付いた視聴者も多かったはず。なんとも飛行機好きをくすぐる演出となっていたが、一方ではこの場面に違和感を感じるマニアもいたという。
というのも航空大学校がSR22を導入したのは2018年で、ごく最近のことだからだ。それまでは「ビーチクラフト ボナンザ36」という機材が使われており、機体の形が違うことは、航空ファンなら一目で分かるもの。2007年当時の帯広キャンパスを舞台としているのであれば、SR22で飛ぶのは時代考証を間違っているとの声もあるようだが…。
「本作では実機を用いた映像が見どころの一つ。航空大学校の協力により、同校が保有するSR22を撮影に使わせてもらうことで、リアリティを担保しています。それゆえ、現在はもう退役してしまったボナンザを使えというのは、さすがに無理が過ぎるというもの。これが『ちむどんどん』に出てきた50年前のバスであれば、なんとか当時を再現することもできますが、さすがに航空機となるとNHKがどこかから調達してくることなど不可能なのは明らかです。結局のところ『ボナンザを見たかった』という声は、ない物ねだりにすぎないと言えるでしょう」(前出・トラベルライター)
舞を演じる福原は実際にSR22に搭乗し、フライトシーンを撮影。パイロットを目指すヒロインの物語としては、十分な環境が用意されたと言える。こればかりは時代考証にこだわり過ぎず、ちゃんと実機を使って撮影したNHK制作陣の心意気を評価すべきではないだろうか。