どう考えても、合理的な理由は見つからなそうだ。
12月7日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第48回では、ヒロインの岩倉舞(福原遥)が航空学校で同期の柏木学生(目黒蓮)から告白されるシーンがハイライトとなった。だが、そこに至るまでの過程に不自然な点があり、視聴者も首をひねっているようだ。
前回、同じ組で訓練していた水島学生(佐野弘樹)がプリソロチェックで不合格となり、あえなくフェイル(退学)に。本来は3人一組で訓練するところを、今後は舞と柏木の二人で訓練を受けることとなった。
水島のフェイルに大きなショックを受け、3日経っても落ち込んだままの舞。水島を落とした大河内教官(吉川晃司)への不信感を募らせる舞は、担当教官を替えてもらうこともできると知り、柏木の部屋を訪ねていた。
「学生寮で水島と相部屋だった柏木は一人部屋となり、舞は『広くなりましたね…』とその寂しさを表現していました。水島や教官の件についてひとしきり会話を交わした舞は、部屋にノートを置き忘れたまま退室。それに気づいた柏木はノートを届けようと、暗い寮内で舞の後を追ったのでした」(テレビ誌ライター)
消灯時間を過ぎ、灯りの落ちた寮内を駆けていく柏木は、守衛が近づいてきたことに気付き、慌てて食堂に駆けこむ。すると舞がテーブルの下に隠れており、二人で一緒にテーブルの下に潜り込んだのだった。
狭い空間に年頃の男女が二人きり。この場面に「あぁ、フラグが立ってしまった」と身構えた視聴者も多かったことだろう。その懸念は的中し、柏木は「俺、お前のことが好きだ」と告白。観る者を感動の渦に巻き込んでいた傑作ドラマだった「舞いあがれ!」が、凡百なラブコメになり下がった瞬間だった。
しかもこの場面には、明らかに不自然な点もあったという。それは柏木の告白をお膳立てするためのご都合主義的な展開だったのである。
「柏木の部屋を出た舞は、自分の部屋にまっすぐ戻るはず。しかし彼女はなぜか食堂で、テーブルの下に隠れていました。守衛に見つからないためかもしれませんが、決して“消灯時間=外出禁止”ではありません。11月29日放送の第42回では舞が、夜中に談話室でカップラーメンを食べる場面があり、その描写と矛盾しているのです」(前出・テレビ誌ライター)
そもそも舞の部屋がある女子寮は“男子禁制”であり、柏木が直接ノートを届けることはできないはず。それに作中の2007年にはもう全員がケータイを持っているのだから、柏木が舞に連絡を入れれば済むだけの話だ。
そういった当たり前の設定を全部すっ飛ばし、夜の食堂で舞と柏木が二人きりになるシチュエーションを描いた今回。もはやラブコメ化まっしぐらの展開に、本気で離脱を決意した視聴者も少なくなかったのではないだろうか。