この人がいなくなってしまったら、ますます作風が変わってしまうのでは…。視聴者は気が気でならないようだ。
12月9日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第50回では、本編の終了後に金曜日恒例の次週予告が流された。その内容に一部の視聴者から先行きへの不安がこぼれているという。
次週予告の冒頭では、航空学校の大河内教官(吉川晃司)が「帯広空港への着陸はあきらめる」と宣言。ソロフライト中のヒロインの岩倉舞(福原遥)が「一人で釧路空港ですか?」と驚く姿が描かれた。
帯広空港から釧路空港へは直線で87㎞。鉄道で言えば東京-小田原や大阪-姫路程度であり、さほどの距離ではない。しかし問題は舞が他の空港に着陸した経験がないこと。空港ごとに着陸時の進入ルートが異なるほか、空港特有の風など未知の領域が多く、いきなりのダイバート(目的地外着陸)はソロフライト課程を始めたばかりの舞にとっては難関だ。
ソロフライトで頼りになるのは自分自身、そして航空無線で繋がっている管制官や教官の指示だけ。もし舞が大河内教官のことを信頼できていないままだったら、釧路空港への着陸には不安しかないことだろう。
「ただ第50回では、それまで反目していた大河内教官の想いを受け止めたと思える場面がありました。教官への信頼が高まっているなら、目的地変更という緊急事態において教官からの指示は命綱のように感じられるはず。おそらく舞はこの緊急事態を経て、大河内教官への信頼をますます高めるのではないでしょうか」(テレビ誌ライター)
その大河内教官、当初の設定では口調もワイルドなキャラクターだったが、吉川のほうから物腰が柔らかくて礼儀正しい人物として演じたいと提案。その人物像が採用されたという経緯がある。
一方で舞たち航空学校の生徒たちはなにかとドタバタしており、現在の内容が青春群像劇になっているとはいえ、繊細さに欠けるとの批判は絶えない。そんななか、落ち着いた雰囲気をたたえる大河内教官は帯広編における“良心”とさえ言える存在になっており、視聴者からは<大河内教官がいてくれてよかった>との声もあがっている。
ところがそんな帯広編の良心が、間もなく作品から退場することが次週予告で示されてしまい、視聴者を嘆かせているというのである。
「次週予告には舞の幼馴染である梅津貴司(赤楚衛二)が登場。二人の家は隣り合っており、窓越しに会話する様子が描かれていました。つまり次週のどこかで舞は東大阪の自宅に戻ることが確定しており、これはすなわち、帯広編の終了を意味しているのです」(前出・テレビ誌ライター)
舞が通う航空学校は実在する航空大学校をモデルとしており、最初は宮崎で座学課程を学び、次に帯広でフライト課程に臨むなど、そのカリキュラムも踏襲されている。今後、学生たちは宮崎に戻ってフライト課程を続け、最後は仙台でのフライト課程を経て卒業となる。
各地を移動する合間には、いったん自宅に戻る学生も少なくない。つまり舞が東大阪の自宅にいる描写は、帯広課程が修了し、宮崎に移動する合間であることを示しているのである。
東大阪に戻れば、地元で看護師になった幼馴染の久留美(山下美月)も出番が増えそう。貴司も実家に戻っているようで、幼馴染3人が出そろう場面には、視聴者の期待も高まるというものだろう。しかしそれは、大河内教官が作品から去ってしまうことでもあるのだ。
朝ドラでは登場人物がいなくなることを「倉庫入り」と揶揄する声がある。舞が所属していた人力飛行機サークル「なにわバードマン」の部員たちや、幼少時を過ごした長崎・五島の住民たちがすでに倉庫入り。五島に住む祖母の祥子(高畑淳子)も、帯広にいる舞からの電話を受けるシーンが1回あっただけだ。
「ただ、それらの人物には再登場の可能性もあり、なにわバードマンの先輩だった刈谷(高杉真宙)は次週予告に声だけですが登場しています。それに対して大河内教官は、帯広編の終了と共に倉庫にしまい込まれるのは確実。この2週間、ドタバタ活劇に堕していたなかで唯一の良心だった大河内教官の退場で、そのドタバタぶりが過激化しないかと視聴者が心配するのも無理はありません」(前出・テレビ誌ライター)
舞が旅客機パイロットになった暁には、定期便で帯広を訪れ、大河内教官に再会するというエピソードに期待したいものだ。