【舞いあがれ!】倫子の熱いジェンダー論を「ちむどんどん」和彦の沖縄愛に重ねる視聴者が続出!

 言いたいことは分かるけど…、視聴者はあまりついていけてなかったようだ。

 12月14日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第53回では、航空学校でパイロットを目指す矢野倫子(山崎紘菜)が、同期の中澤学生(濱正悟)に自身の熱い想いを語る場面が描かれた。そんな倫子に、前作「ちむどんどん」の登場人物を重ね合わせる視聴者も少なくなかったという。

 いよいよ妻に離婚届を返送する決心をした中澤。倫子はそんな中澤に、妻との話し合いを促す。ヒロインの岩倉舞(福原遥)と吉田学生(醍醐虎汰朗)も見守るなか、膝を詰めて話し合う二人。「なんで俺が離婚しなきゃいけないんだよ!?」と苛立つ中澤に、倫子は「中澤は美幸さんの夢、聞いたことあるの?」と問い詰めたのだった。

 中澤が夢を追いかけられるのは「中澤が男だからだよ」と、いきなりのジェンダー論を展開する倫子。2007年当時の日本にはまだ女性の機長がいないと語り、「中澤はその意味を全然分かってないんだよ」と指摘だ。そんな問答が続くなか、「男が稼いで女が家庭を守る。そう決めたのは世の中だろ!?」と反発した中澤に、倫子はお茶をぶちまけたのだった。

「倫子は男社会の商社で“女の子扱い”されることに我慢ができず、航空学校に入学。女性には無理だといわれているパイロットになることで見返してやるとの反発心が、彼女の原動力になっているようです。しかし中澤と妻との離婚は完全にプライベートな話であり、倫子が自分のジェンダー論を根拠に他人の家庭問題に介入するのはお門違いも甚だしいところ。この場面、倫子を応援する声はごく少なく、多くの視聴者は倫子の行動が自分勝手だと眉をひそめていました」(女性誌ライター)

 なかでもお茶をぶっかけた場面には<男と女が逆だったら大変なことになる!>との指摘が続出。制作側の狙いはともかく、視聴者には倫子のことが、自分の感情を制御できないエキセントリックな人物に映っていたことだろう。

激高してお茶をぶっかけた倫子。怒らなかった中澤は大人の態度だった。トップ画像ともに©NHK

 自分の想いだけを一方的に主張する倫子。そんな彼女の姿に、前作「ちむどんどん」の青柳和彦(宮沢氷魚)を重ね合わせる視聴者もいたという。

 和彦は中三の時に父親と一緒に暮らした沖縄に強い愛着を持ち、沖縄に関する本を書きたいという想いを抱きながら新聞社に入社。社内の企画募集に沖縄の歴史を描く特集で応募し、見事当選を果たしていた。

 一方で沖縄に対する想いはいつしか、沖縄出身のヒロイン・比嘉暢子(黒島結菜)への愛情も育むことに。長年交際してきた同僚の大野愛(飯豊まりえ)に「すべてなかったことにしてくれ」と自分勝手な態度で交際終了を宣言し、それからわずか1週間後には暢子に対して結婚を申し込んでいたのだった。

長年の恋人だった愛からあっさりとヒロイン暢子に乗り換えた和彦。©NHK

「和彦にしても倫子にしても、自分の強い想いに他者を巻き込もうとする独善的な姿勢が目立っています。倫子の場合は和彦とは異なり、お茶をぶっかける程度の迷惑に留まっていますが、その態度に不満を抱く視聴者が続出している点は一緒。制作側はあえてそういった身勝手な人物を描こうとしているのか、それとも視聴者が共感してくれるはずだと勘違いしているのか。いずれにしても、和彦や倫子に肩入れする視聴者がほとんどいないことは確実でしょう」(前出・女性誌ライター)

 前作「ちむどんどん」の和彦は途中から、ネット上で「エア彦」と呼ばれるほどに存在感が希薄になっていた。果たして倫子もそのうち存在感が薄れていくのか。

 ヒロインの舞にとって唯一となる同性の同期生として、航空学校の卒業後にも引き続いて登場してほしいとの期待があるなか、倫子の行く末を案じる声も少なくないようだ。