【舞いあがれ!】母娘の夕飯は親子丼!見えないところにも手を抜かない「こだわり」が視聴者を惹きつけるワケ

 だから小さなしゃもじだったのか! そのこだわりに視聴者は感心しきりだったようだ。

 12月26日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第61回では、ヒロイン岩倉舞(福原遥)の父親で部品工場を経営する浩太(高橋克典)が過労による胃潰瘍で入院。舞と母親のめぐみ(永作博美)が二人きりで夕飯を口にする姿が映し出された。

 普段はダイニングのテーブルに浩太とめぐみ、舞の3人で座るところ、この日は母娘の二人だけ。浩太不在の寂しさを実感させる場面だったが、ここで二人の食べていた料理が同日の正午に公式ツイッターにて公開され、視聴者を驚かせていたようだ。

「二人は小さなしゃもじを使って丼ものらしきものを食べていました。ただ丼の中身までは映し出されず、何の料理なのかは分からずじまい。それが公式ツイッターによると親子丼とカブのお漬物、そしてとろろ昆布汁の3つだったそうです。ツイートには料理を上から写した画像が添えられており、その美味しそうな雰囲気には視聴者から《レシピ教えてください!》《旨そうやなあ》といった声が続出していましたね」(女性誌ライター)

 親子丼は放っておくと具の部分が固まってしまい、見た目の美しさが損なわれてしまうもの。撮影ではおそらく本番が始まる直前に料理を完成させていたのだろう。

 だが丁寧に調理した料理も、画面上ではほとんど見えないことに。なんとも残念な話だが、見えないところにもしっかりとこだわる画づくりからは、制作陣が本作にどれほどの熱を入れているのかが伝わってくるというものだ。

母娘の食事シーン。料理がほとんど映っていなくても美味しさが伝わってくるかのようだ。トップ画像ともに©NHK

「ここで思い出されるのが、前作の『ちむどんどん』。ヒロインの比嘉暢子はコックを目指して沖縄から上京し、イタリア料理店で修業したり、得意な沖縄料理をふるまったりと、調理シーンや料理そのものはふんだんに出てきました。それにも関わらず作中の料理があまり美味しそうに見えず、視聴者からの批判が続出。その原因が制作側にあったことはすでに、多くの視聴者が知る通りです」(前出・女性誌ライター)

 なにしろ「ちむどんどん」の脚本を担当した羽原大介氏は、ドラマの公式本にて「ここで白状しますと、僕たちおじさん3人は料理の知識が全くないんです」と放言。料理人をヒロインに据えたドラマにおいて、口にしてはいけない言葉を堂々と明かしていたものだ。

 その無責任な態度は作中の料理にも波及し、料理監修スタッフがいるにもかかわらず、イタリア料理の専門家からクレームがつく始末。もとより考証が行き届いていないのは料理に限らずあらゆる面でも同様だったが、なにしろ肝心の沖縄料理すら美味しそうに見えない有様だったのである。

「だからと言って『舞いあがれ!』の制作陣が『ちむどんどん』を他山の石としたわけではないはず。彼らはあくまでドラマ制作において守るべきものを守っているだけなのでしょう。それでもそういったこだわりは、視聴者にも伝わるもの。岩倉家の隣にあるお好み焼うめづでは、店内の鉄板にしっかりとガスが通っており、実際にお好み焼きを焼けるそうです。そのこだわりがあるからこそ、舞たちが『美味しいなあ♡』と嬉しそうに豚玉を頬張る姿にもリアリティがこもるのではないでしょうか」(前出・女性誌ライター)

 前週の第60回には舞が包丁で魚をさばくシーンがあった。これも舞を演じる福原に「クッキンアイドル」の経験があり、包丁の使い方をマスターしているからこそ。そばで見守っていた祖母の祥子(高畑淳子)と同じように、視聴者も舞の包丁さばきに笑顔を見せていたことだろう。

 主題が飛行機や空にありながら、料理に関してもまったく手を抜くことのない「舞いあがれ!」。この調子なら2023年に突入しても、視聴者は物語に没入することができるはずだ。