【舞いあがれ!】悠人のiPhoneや父親のノートPCに「時代考証が完璧」の声!

 どうやら脚本家が変わると、考証担当班も力を入れて仕事をするのかもしれない。

 12月26日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第61回では、ヒロイン岩倉舞(福原遥)の父親・浩太(高橋克典)が過労による胃潰瘍で入院。長男でファンドマネージャーの悠人(横山裕)がお見舞いに訪れる姿が描かれた。その作中に登場したIT機器に、興味を示す視聴者が続出していたようだ。

 ヘッジファンドを手掛ける悠人は「リーマンショックを予測した男」として有名に。一方で作中では2009年1月となっており、浩太が経営する部品メーカーの株式会社IWAKURAにはリーマンショックの影響が直撃。工場を新設して自動車向け部品に業務を拡大したものの、発注がすっかり途絶える危機的な状況になっていた。

「そんな状況で社長として休んでられない浩太は、妻のめぐみ(永作博美)にノートパソコンを病室に持ってくるよう頼みました。翌日、めぐみは約束通りに持参しましたが、そのノートパソコンにITマニアが興味津々だったのです」(IT系ライター)

 浩太のノートパソコンは15インチほどの大型サイズ。2009年当時にはすでに軽量薄型のノートパソコンも少なくなかったが、工場のようなオフィス用途では大型ノートが主流だったものだ。インターフェース類は背面側に並んでおり、これもまた2010年以前のモデルであることを実感させている。

 背面に並ぶインターフェースにはUSBポートやLANポートなど現在のモデルと共通するものもあるが、その一方で外部モニターを接続するための映像出力はVGAポートの様子。まだHDMIには対応していなかったようだ。

 そのほか、妙に細長いポートや丸型のポートなど、最近のノートパソコンでは見ることのない形状をしたインターフェースも用意されていたのである。

「丸いポートは2つあり、片方はマウスやキーボードを接続するPS/2ポート。もう片方はそちらもPS/2ポートかもしれませんし、もしくは映像出力用のS端子かもしれません。また横長のポートはプリンターなどを繋ぐためのDSUB 25ピンという規格。いまやプリンターもUSB接続するのが常識ですが、この当時は専用のポートを必要とする機種も珍しくなかったのです」(前出・IT系ライター)

ちゃんと電源を繋いでいるところも地味に見逃せないポイントだ。トップ画像ともに©NHK

 IT好きにとっては2009年以前らしさを感じさせる、絶妙なアイテムとなっていた浩太のノートパソコン。視聴者からは、どうやってインターネットに繋いでいるのかを怪しむ声もあがっていたが、おそらくはイーモバイルやウィルコムのWi-FiサービスをCFカードタイプの無線LANアダプターで利用していたのだろう。

 その一方で今回の作中には、パソコン類に興味のない人にとっても2009年という時代を感じさせてくれるデジタルガジェットが登場していた。それはカフェ・ノーサイドで舞と話をしていた悠人が使っていたiPhoneだ。

 今では珍しくもなんともないiPhoneだが、日本国内では前年の2008年7月11日にソフトバンクからリリースされたばかりの最新ガジェット。当時の機種は「iPhone 3G」で、悠人が持っていたのもその形状から同機種であることは確実だ。どうやら美術班はしっかりと時代考証したうえで、時代的に正しい機種を用意したのだろう。

「今では小学生でも持っているスマホですが、2009年1月当時の日本国内にはiPhone 3Gしか存在していませんでした。Android搭載スマホはドコモからリリースされたHTC製の『HT-03A』が日本初で、2009年6月のこと。ブラックベリーはすでに2006年から国内市場に投入されていたものの、スマホではなく『携帯情報端末』や『PDA』と呼ばれており、一部のガジェット好き以外には知られていなかったものです。ともあれ悠人がいち早くiPhoneを使い始めていたのは、時代に敏感であるべきファンドマネージャーのあるべき姿と言えるでしょう」(前出・IT系ライター)

 2009年と言えばわずか13年前の話だが、その間にIT機器を取り巻く進化は急速に進み、当時のノートパソコンや携帯電話はすでにほとんどが使い物にならなくなっている。現代劇の「舞いあがれ!」でも、そんな時代の流れを感じた視聴者は多かったのではないだろうか。