【舞いあがれ!】永作博美の泣き演技が上手すぎて、朝から気持ちの沈む視聴者が続出!?

 それが演者の責任でないことは間違いないだろう。

 1月6日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第66回では、ヒロイン岩倉舞(福原遥)の父親で町工場を経営する浩太(高橋克典)が心臓発作で急逝。その場面に心をえぐられてしまった視聴者が少なくなかったという。

 浩太が経営する株式会社IWAKURAは、リーマンショックの影響で受注が激減。経営が傾くなか、起死回生策として太陽光発電向けのねじを受注するも、発注側の設計変更により本注文がなくなってしまい、見込み量産していたねじはすべて不良在庫となってしまった。

 そのショックもあってか、以前から身体が弱っていた浩太は心臓発作により工場の事務室で倒れることに。妻のめぐみ(永作博美)と舞が発見した時にはすでに呼びかけにも応じず、病院で緊急手術を受けることとなった。しかしめぐみと舞の願いもむなしく、浩太は帰らぬ人に。手術室から出てきた医師に「手は尽くしましたが、大きな発作で、お助けできませんでした」と告げられたのである。

「5秒ほど沈黙しためぐみは、おもむろに『嘘ぉ!?』といって笑いだすことに。それが心を守るための防御反応だったのは、視聴者にも明らかだったことでしょう。次いで『嘘や、なぁ!』と舞に呼びかけるも、舞は茫然としたまま。ついにはめぐみも声にならない嗚咽をあげはじめ、『お父ちゃ~ん…!』と慟哭しながら崩れ落ちたのでした」(女性誌ライター)

 ここで永作が見せた慟哭は、とても演技とは思えないほどのリアリティに満ちあふれており、女優としての凄まじさを見せつけた場面だったと言えるだろう。

 一方の福原も唖然とした表情からボロボロと涙をこぼし、言葉を失うほどの悲しみに襲われている姿を見せることに。二人は浩太の死に直面した妻と娘の絶望を、余すところなく表現していたのではないだろうか。

経営者夫婦としてIWAKURAを支えてきた浩太とめぐみだが、ついに浩太が旅立ってしまった。トップ画像ともに©NHK

 もとより演技派として定評のある永作が見せた、渾身の演技。そして永作の慟哭を邪魔することなく20代の娘らしい悲しみの演技を見せた福原。本作「舞いあがれ!」きっての名シーンとなっていたが、そんな二人の演技が波紋を呼んでいるというのである。

「とくに永作の演技があまりにも真に迫り過ぎていて、身内を失った経験を持つ視聴者はその悲しみがフラッシュバックしてしまうことに。感動シーンのはずが辛い過去を思い出してしまい、暗い気持ちになってしまったのです。視聴者からは《朝からこれを見るのは辛い》《あまりに上手いのも考えものだな》といった声もあがることに。私も親を病気で失っており、当時を思い出して気持ちが沈んでしまいました…」(前出・女性誌ライター)

 物語の要素として考えれば、浩太の死は「一家の大黒柱が失われた」という記号的な出来事だろう。その記号をよりドラマチックに描くため、永作には迫真の演技が求められたはずだ。

 そんな制作側の狙いにきっちりと応えてみせた永作。だが泣きの演技があまりに見事だったゆえに、朝っぱらから視聴者の気持ちを沈ませてしまったのは、なんとも計算違いな話だったのかもしれない。