【舞いあがれ!】舞が「ちむ子」になった?感情移入できないヒロインに視聴者も呆れ顔

 多くの視聴者が「そうじゃないだろ…」とのため息をついていたようだ。

 1月11日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第69回では、ヒロインの岩倉舞(福原遥)が実家の工場をなんとしても救いたいと主張する姿が描かれた。だが視聴者は、一貫性のないヒロインに呆れ顔を見せているという。

 前週、舞の父親で社長の浩太(高橋克典)が心筋梗塞で急逝し、部品工場の株式会社IWAKURAは苦境に立たされることに。折からのリーマンショックで業績も悪化しており、信用金庫からは会社を畳めば借金を完済できると迫られていた。

 社長代行となった母親のめぐみ(永作博美)は思い悩んだ末、従業員を守るためにIWAKURAを畳むと決断。会社を丸ごと引き受けてくれるところを探すと宣言だ。だが家業の工場がなくなることを、舞は受け入れられない様子。その苦境を幼馴染の久留美(山下美月)と貴司(赤楚衛二)に愚痴っていたのである。

 二人に対して「お母ちゃん置いて、私だけ前に進んでええんやろか」との気持ちを明かす舞。すると久留美は「え、待って? パイロット諦めるつもり? 諦めて舞に何ができるん?」と、厳しめの口調で問い詰めたのだった。

「この場面、多くの視聴者は久留美側に立っていたことでしょう。久留美は幼いころに両親が離婚し、父親は仕事が続かない体質。子供のころから身の回りのことは自分でこなし、高校ではアルバイトに没頭しながらアパートの家賃を負担していたこともありました。看護学校では成績優秀者だけが受けられる授業料免除を獲得し、自分の力で看護師になっていたのです。そんな久留美から見れば、何の苦労もなく大学に進学し、航空学校にも進ませてもらった舞が、その過程をあっさりと捨てるような真似をする姿に納得がいかないのも当然でしょう」(テレビ誌ライター)

 飛行機好きだった父親の背中を見て育った舞は、飛行機を作る仕事がしたいとの夢を抱いて浪花大学の航空工学科に進学。人力飛行機サークルの「なにわバードマン」で空を飛ぶ魅力を知ると、両親を説き伏せて大学を中退し、航空学校に入学していた。

 航空学校を無事に卒業し、ハカタエアラインに内定。リーマンショックの影響で入社は1年遅れになったものの、パイロットへの道は約束されていた。それが家業の苦境に居ても立っても居られなくなり、今度はパイロットを諦めて工場を手伝うと言い出したのである。

 大学を辞めてパイロットを目指したところまでは、視聴者も応援していたはず。だが工場を手伝うとなると話は別だ。それまでの努力や経験、周りからの援助さえも打ち捨ててまで自分の行きたい方向に行くという姿には、どうにも既視感が否めない視聴者が続出しているという。

「舞のふるまいに対して視聴者からは《まるでちむ子じゃん》という声があがっています。ちむ子とは、前作『ちむどんどん』のヒロインだった比嘉暢子のこと。その暢子は自分の気持ちの赴く方向に強引に進んでいく性格で、周りの迷惑など顧みることなく、他者の助言も受け入れないタイプ。その身勝手さに視聴者は呆れ果てていましたが、よもや舞さえも暢子さながらの身勝手さを発揮するとは驚き。2作品続けて、視聴者が肩入れできないヒロイン像が描かれているのです」(前出・テレビ誌ライター)

行き当たりばったりな舞の発言に呆れていた久留美。トップ画像ともに©NHK

 沖縄生まれの暢子は高校の文化祭で突如として料理人になるとの思いが高まり、就職内定を蹴って、当てもなく上京。運よく銀座のイタリア料理店で働くことになった。そこで修業を積み、親戚でもあるオーナーから独立を促されると、それまでのキャリアを捨てて沖縄料理店を開業。しかも縁もゆかりもない東京・杉並に店を構えたのだった。

 その間、幼馴染からのプロポーズはあっさり拒否するも、恋人と別れたばかりの新聞記者・和彦から求婚されると即座に承諾。子供も生まれて落ち着いたかと思いきや、せっかく軌道に乗った店を手放してしまい、故郷の沖縄・山原に戻って新たに沖縄料理店を始めるなど、常に行き当たりばったりの人生を送っていたのだった。

「そんな暢子の物語を見せられたばかりでしたから、空を飛びたいという夢を追いかける舞に視聴者は、ようやく感情移入できるヒロインが見つかったと喜んでいました。ところが舞のほうもその場その場の感情で動くタイプであることが判明し、期待を裏切られることに。この調子では恋人の柏木や幼馴染の貴司を巡る恋バナに関しても、視聴者をさらに驚かせる展開が待ち受けているかもしれません」(前出・テレビ誌ライター)

 第69回のラストシーンでは、社長代行のめぐみすら「会社…つぶせへん。続ける」と言い出していた。これでIWAKURAが会社存続を果たしても、ご都合主義との批判を免れることはできなさそうだ。